時代を先取る

所用があって、ボーダフォンショップへ出掛けた。
どうせ行くならと、六本木店に行ってみた。
六本木交差点、三菱東京UFJ銀行の隣、なら分かりやすい。
ところがUFJはあれど、目的のボーダフォンが、ない。
あの安っぽい赤の看板が見当たらない。
通り過ぎてから、いつの間にか真っ白になって、「SoftBank」と書かれた店舗がそれだと気付く。

10月1日からのハズでは?
でも事前に順次改装するのは大手企業なら当たり前。
早速中に入ってみると、入口に番号発券機が。
さすがに六本木店は来客も多く、こういうものが必要なのだろうと感心しながら1枚手に取り、とりあえず店内を徘徊する。
新型機種に興味などないので、テーブルに設置されたノートパソコンに近づく。
「お待ちの間、無料インターネットをどうぞ」なんてオネエサンに声を掛けられるが、そんなのは毎日やっている。

パソコンには見慣れたヤフーのポータルが開かれている。
しかし「携帯電話のボーダフォン」⇒「ソフトバンクへ」⇒「だからインターネットはヤフー」という連鎖がすぐにはピンと来なかった。
本業を圧迫しかねない大借金をして買った念願の通信会社。
その買収による相乗効果で高められる企業価値というのは、こんな程度のものなのだろうか。

隣のパソコンは何故か英語。
とふと辺りを見回すと、カウンターにいる客の大半が外国の方。
スタッフにも外国の方がいて、日本人らしいスタッフもどうやら日本語で喋ってはいない。
新たに入ってきたご婦人も明らかに外国人。
と、さっきのオネエサンが英語でガイダンスをしている。

何だこの店?
外国人専用ショップ?
というか、さっきから10分ほど経つが、いっこうにどの客の商談も終了しない。
スタッフの、なんかこう「ワタシは英語喋れますよ」的な、「英語のスキルを生かしたお仕事がしたい」みたいな雰囲気。
事務手続きをすると言うよりは、外国人とのトークを楽しむというか、そんな仕事をしている自分に酔いしれているというか、そんな時間の止まった空間。
一向に終わらない商談と6人待ちに耐え切れず、早々に店を後にした。
入口に飾られた電通から贈られた蘭の鉢植えが、空しく見えた。
過剰な演出は、時代を先取り過ぎぢゃないの?

用件は最寄りのショップで済ませたのだが、いつの間にかその店も白く塗られていた。
「目立たなくなりましたよね」と話すそのショップのスタッフは、目まぐるしく変わる端末の操作仕様が把握できず、四苦八苦していた。
急ごしらえに白く塗られただけの店内。
「六本木店」になりきれない現実がソコにはあった。
イメージ優先の宣伝戦略もいいが、実態が伴わないというのもいかがなものだろうか。

番号ポータビリティ制度導入を機に、他社への乗り換えを検討しようかなと、ふと思った1日だった。