ほおれ言わんこっちゃない

dubrock2010-07-26


に死んだオヤジの、新盆が近づいてきた。

葬儀不要、墓不要。

宗教なんか“もってのほか”のオヤジではあったが、死後はまんまと地元の、それもコテコテの「お寺さん」に入れられてしまった。

これといった具体的なプランもなく、「こうなったらいいなぁ」ぐらいの漠然としたものを言い遺されては、残された家族が困るのだ。
そう思いながら手続きを進めた今回の墓所購入なのであるが、ココへきて「ちょっとしくじったかな」と思い始めている。

それというのも、母のことだ。

オヤジが宗教を毛嫌いするのは、おそらく自衛隊という狭いコミュニティの中で、カルト的な宗教にのめり込んで財産の一切を寄進してしまったヤツというのを、何度となく見てきたからだろう。
幼少期から貧乏で苦労したオヤジからすれば、他人に縋らなければ自分を保っていられない精神状態など到底理解できるものではなく、
「自ら進んで財産を差し出すなんて、洗脳でもされているに違いない」
そうとしか思えなかったようである。

手記によれば、戦後の混乱期に妹の産後で体調を崩した母親を助けるべく父親は借金をし、その「薬代」を居候に託すも遭えなく持ち逃げされ母親は死去。
その後は屋敷も取り上げられ文字通りの極貧生活を送った経験から、
「もし神仏が本当にこの世にあるのならば、我が家族にこんな酷い仕打ちはすまい」
そう思うように“なった”と書かれているが、これは「後付け」の理由だろう。

オヤジの兄(私の伯父)は寺の娘と結婚したのであるが、何故か息子(私の従兄)は“クリスチャン”となって、伯父の死後は生家を引き払い転居。
「墓を守る“気”すらない」というのも、オヤジからすればショックだったようだ。

ともかく、オヤジの前で宗教に関することというのは“禁句”であって、お盆の墓参りもなければ正月の初詣もない。
そんな、神道すら否定する筋金入りの“嫌宗教”のオヤジだったのである。

で、今回、そのオヤジを寺に入れた。
骨壷の置き場所に困っての措置ではあったが、相手はコテコテの仏教。
弘法大師空海)由来(千葉県南部には「弘法大師空海)由来の神社仏閣」というのが、バカみたいにやたらと多い。)の真言宗智山派であって、成田山に高尾山、川崎大師あたりが大本山の“宗教”である。

なので、その後の“供養”というものも、「真言宗智山派」の教えに従って進めていくことになるのであるが、・・・

母は、元来信心深いものがあった。
「夢見が悪い」と言って、離れて暮らす兄弟姉妹に電話を掛けることもしばしばだった。
そもそも母の母、つまり私の祖母というのも信心深い人で、晩年は四国はじめ全国の霊場を訪ね歩き、その功績で“それは高貴な”戒名を頂いたそうだ。
(それが元で伯父さんは相当苦労したようだったが。)

そんな母の“宗教リミッター”を今回の檀家入りが外してしまったというか、「スイッチを入れてしまった」というか、ともかく、先祖の供養とか、土地のお祓いとか、そんなことを言うようになってしまったのである。

そのこと自体は、別に責められるべきことでもないのだが、檀家入りした寺は残念ながら近くの寺の住職が兼務で勤め、その住職も普段は会社勤めして生計を立てている有様。
残念ながら、母のそんな相談に乗れるような暇など、なかったのであった。
(オレが“聞き役”に回れなかったのが悔やまれる。)

で、まあ、こういう時の“お約束”なんだけれども、

「よく当たる」と評判の“占い師”が出てきて、・・・

先日は、“先祖の供養”をしてきたそうである。
その席上では、
「成仏できなかった近い先祖と、遠い先祖が涙を流して喜んでいる」
そして、
「土地のお祓いがキチンと済んでいない」
と言われたのだそうである。_| ̄|○

「近い先祖」と「遠い先祖」って、ソレじゃあ“全部”じゃねぇかよ(#゜Д゜)ゴルァ!!
当てずっぽうにも程があるぞコノヤロー。
挙句に30年も住んだ、住んじまった場所に「土地のお祓い」とか、よくイケシャアシャアと、・・・

だいたいだね、オヤジは「真言宗智山派」の寺院に納まってもらったワケだから、“先祖の供養”なら「真言宗智山派」の作法に則って執り行うのが道理。
それを、ワケの分からん“占い師”だか“霊媒師”だかがしゃしゃり出て来て、・・・

“お祓い”なら本職の陰陽師呼ぶわい!(# ゜Д゜)

なのだが、有り難がって実家の“土”を宅急便で送って、「祓ってもらう」とか言ってるバカ母がここに_| ̄|○
(そんなん、金だけ抜いて公園にでも撒かれて終わりだよ、オワリ。w)

たぶん、オヤジの「宗教は一切ダメ」は、“おっ母”のこういう一面を知っていたからのこと、なのだろう。
「これくらいは」と一つ認めると、アレもコレも際限なくなってしまって、かといってそのことについて意見すればケンカになる。

大好きなオカアチャンとケンカしたくないから、「宗教は一切ダメ」

それがオヤジなりの夫婦円満の処世術に思えてきて、

「ほおれ言わんこっちゃない」

そんな、オヤジの声が聞こえてきそうな今日この頃なのである。

来月には住職が自宅に来て念仏をあげてくるという。
それに合わせてババア伯母さんたちが、南国の南房総へリゾート気分で来てくれるそうだ。
「先祖の供養」と「土地のお祓い」は、インチキ霊媒師の常套句。
こんどはオレが、オヤジの役を演じなければならない、なんとも気の重いオヤジの新盆なのである。

ほおれ言わんこっちゃ、ない。
だから宗教なんて、・・・