原油市場とガソリン価格 後編

(注:この文章は昨日の記事からの続きです。)

ちなみに一般的には『買い手』が優位に思われる商取引だが、『売り手』優位の業界というのも珍しくはない。
『安定供給』や『特約販売制度』、『予信の付与』など要因は色々あるが、石油業界には『事後調整』という、論功行賞的な慣習が売り手優位を更に強固なものにする。
要は売った量の多少によりさじ加減で追加値引きを行う、というものだが、これが、石油業界が『卸し元への接待』が経費として認められる理由であり、『元売りの言いなり』が横行する理由でもある。

これにより、自身の損益状況から値引き額を算出するので、赤字決算もなければ利益の出し過ぎによる節税もできる。
販売業者は期末に決算対策金さえ貰えば成り立ってしまうので、経営に悩む必要もない。
ただ当初の卸し価格がやや高くなるのを除けば。

そんな『民族系』と呼ばれる元売会社の弱点に目を付けたのが、『外資系』と呼ばれるエクソン・モービルグループだ。
彼らは『事後調整なし・先決め価格』として民族系よりも安い卸し価格を提示して、シェアを増やしてきた。
また、精油所をフル稼動させて余った製品を業転(業者間転売)として正規品より安く市場に流通させた。
この場合のコスト算定根拠は『受給バランス』。
原油価格なんて関係ないのである。

市場が物余りになり採算ベースを割り込むようになると、外資の売り攻勢は一転して流通量を絞り込み「プチ石油危機」とも言える品薄状態を作り出す。
背景的に商品先物原油先物の価格高騰を理由付けする場合が多く、一気にこれまで下げるだけ下げた市況を持ち上げにかかる。
本来この外資の動きに対抗して商品供給を潤沢にするのが民族系なのだが、「高値安定市場」を好む我らが民族系大手は外資の動きに迎合し、品薄状態に更に拍車をかける。
そして市場の高値安定が極大となった瞬間に、外資の「売り攻勢」が再び行われる。

今回のコンビニレシートにしたって、大手所2社とガッチリ組んでレシートも事前に印刷し、自社ネットワークでのバーコード対応も準備が完了している。
つまり急ごしらえではなく明らかにかなり長い準備期間を経て打ち出された「5円引き」であり、それは世間が「原油高騰、ガソリン価格急上昇」と騒いでいたまさにその瞬間に準備されていたこととなる。
こうやって意図的に市況価格に「波」を持たせ、その崩壊のタイミング作りにイニシアティブを持つことによりシェアを拡大し続けてきた外資系元売。

それを批判するつもりなんかさらさらなくて、もういいかげん消費者の方が学んで欲しいものだとつくづく思う秋晴れの朝なのだ。
上がった、下がったといちいち騒がない消費者、業界内だけの論理で動く談合体質を許さない消費者へと。