来たぞ!フルパワー

国内で販売される二輪車の出力自主規制、いわゆる「100馬力規制」が、近く廃止されるそうだ。
一口に「100馬力」と言っても、これは排気量1000ccを超えるいわゆる「リッターバイク」に関する規制のハナシ。
原付から原付2種、250ccに400ccと、あらゆる排気量クラスによって、こと細かく規制値が定められていた。
しかしながら技術の進歩はあっという間で、気がつけばほとんどのバイクがその上限値に張り付く異常な事態が長年続いた。

ただ原付免許で乗れる原チャリ、車検の無い250ccのバイク、普通二輪免許(昔の中免)で乗れる400ccなどは、全て国内での法規制による都合のもの。
そんな法規制に囚われないヨーロッパなどでは、オートバイに最適な排気量は650ccと言われている。
もちろん、1000ccを超えるフラッグシップモデルもあるにはあるが、保険料が天文学的数字になってしまい所有できる人はごく一握りとなっている。
そういう意味では、「二輪車」という括りで割安な保険料でリッターバイクに乗れる日本は恵まれた国であり、幸せなことと言える。

前述の通り日本国内の法規制の都合による250ccやら400ccのバイクが、海外で販売されるケースは少ないが、1000ccを超えるバイクは、同じモデルが海外でも販売されている。
だいたい、レース用のものからフィードバックされた空でも飛びそうなデザインのバイクが、100馬力ってハナシはない。
規制のない国では同じモデルが150馬力、160馬力と謳われて販売されているのである。
それがカタログスペックだけかと思いきや、エアクリーナーで吸気制限をされたり、小さい口径のキャブレターが付けられていたりと、しっかり100馬力近くまで落とされているのだから、そういう規制モノしか手に入らない日本人は不幸とも言える。

もちろん、「フルパワーの本来の性能のリッターバイクに乗りたい」というニーズは高く、それに応えた業者も規制の無い国で販売されたカワサキやホンダを、わざわざ輸入してくる(逆輸入)し、また国内規制用にデチューンされたパーツのみを換装する「フルパワーキット」を売り出す者もいる。
ところが、素性の曖昧な逆輸入車はメンテナンス時に、微妙なパーツの違いが問題になったりするし、メーカーの補償も受けられない場合が多い。
そんな問題とか、行きつけの正規店のオヤジの顔であったりで、リッターバイクながらも100馬力の国内仕様を買おうものなら、こんどは保土ヶ谷パーキングみたいな品評会の場で失笑を買ったりする。
「日本国内では150馬力も要らない」と言うなら、100馬力ですら要らないし、1000cc超という排気量も要らなくなってしまう。
ドコでその能力を発揮するのか、なんて愚問なのである。

ところでこの自主規制、年々増え続ける二輪事故への抑止効果が目的であって、廃止の理由は規制を受けない海外メーカーの台頭と、国内メーカーの競争力強化と言うが、果たして事故の抑止になったのだろうか。
海外メーカーに売り負けるのは、自主規制が原因だろうか。
二輪事故が増えたのは、80年代後半から90年代初頭までのレーサーレプリカブームの為。
馬力を規制して、果たして事故は減っていただろうか。
ブームが去れば事故は減る。
当たり前だ、乗ってるヤツが居ないのだから。
逆輸入車が店頭を埋め尽くしているのに、ハーレー、ドゥカティBMWばかりが売れるのは何故だろうか。

無意味な自主規制はするべきでないし、努力もせずに自社製品が売れない理由を規制のせいにするべきでもない。
まあ、下らない規制が一つ無くなった。
それだけでも、喜びべきことだろう。
それと、若者が二輪車に乗らなくなったのは、また別のお話し。