稼げ、若造

dubrock2008-02-12


もうすぐ年度末を迎え、進学などで生活環境が変わる若者も多いだろう。
ここに、晴れて高校を卒業し大学の二部(夜間)に進学する若者がいる。
実質的な登校日は「卒業式」を残すばかりとなり、4月からは大学生、それも二部というコトで、平日日中のバイト先などを模索している次第だ。
ココで彼は父親から、「フヨウの範囲内で働くように」とクギを刺されたらしい。
なんでも103万円と130万円というラインがあって、それらを「超えないように」というお達しらしいが、なんでラインが二つあるか分からない。
超えると税金がかかる」らしいが、ならば税金を払えばいいだけではないだろうか。
っていうか、「フヨウ」って何?

源泉徴収」という制度がサラリーマンの納税を円滑にし、また「税務申告」という手間も大幅に省いてくれるが、それと同時にサラリーマンの納税意識というものも著しく低下させた。
平ったく言えば「勝手に引かれる」のがあまりに当たり前になってしまって、どういう理屈で引かれているのかも、ついには払っているコトすら認識していないヒトが多くなってしまったというコトだ。

ふよう【扶養】:?たすけ養うこと。?生活の面倒をみること。

税金のハナシをする時の「フヨウ」とは「扶養」を指す場合が多く、それは「扶養控除」と同義である場合が多い。
意味合い的には?のほう。
一般的に一家の大黒柱である「お父さん」は、会社に勤めて毎月給料をもらって来る。
その「給料」で家族が生活するワケで、「父・母・長男・長女」の4人家族だった場合、「母・長男・長女」は「父」に「扶養されている」というコトになる。
お父さんの会社に独身の同僚が居た場合、この同僚は一般的には扶養する家族はおらず、自分の給料で自分の生活を賄えばいいというコトになる。
「お父さん」と「同僚」が同じ仕事をしていた場合、会社としては同じ給料を払うのが「平等」というコトになるが、「お父さん」はその給料で一家四人を養い、「同僚」は自分一人食っていけばいいというコトになるので、これはどう考えても「お父さん」の方が大変だ。
なので、国は「大変なお父さん」にかかる税金を軽くする制度を持っている。
これが「扶養控除」だ。

この「長男」が今回大学の二部に進学するとしよう。
昼間時間があるのでバイトをする。
お小遣いがたくさん欲しいので一生懸命バイトする。
で、ある程度稼げるようになった場合、それでも「お父さん」の税金の軽くしたまま、というのは不公平だ。
「長男」は自分で稼げるようになったのだから、もう「お父さん」の扶養ではない。
その境目となるのが、「長男が103万円以上稼ぐかどうか」というコトだ。

今年一年、「長男」が一生懸命バイトするコトによって、結果的に103万円以上稼いでしまったとする。
年間103万円なので、月8万ソコソコ。
そんなに無理な金額ではない。
その瞬間に、「お父さん」の扶養控除として軽くなっていた税金のうち、「長男の分」がナシになってしまうのだ。
つまり「お父さん」は、年末に追加分の税金を払わなければならなくなり、その分給料から引かれる税金がガッポリ増えて、その月の手取りが減る。
それが困るから「扶養の範囲内で」と念を押しているのだ。

増える税金の額については「お父さん」の年収にもよるので一概には言えないが、
扶養枠103万円と130万円の違いについて - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa628445.html
でも触れられている通りおおよそ10万(年額)ぐらい。
これが年末に突然給料から天引きされれば「お父さん」は負担増かもしれないが、その為に「月8万程度しか稼げない」というのもどうだろうか。
件の当人は「月8万じゃとても足りない」というのが本音だという。

トコロでこのハナシには「103万円」という数字は出てきたが、「130万円」という数字は出てきていない。
「130万円」が問題になるのは「税金」ではなく、「健康保険」上で「扶養」とするかどうかというラインだからだ。
「税金」上は103万円を超えると「一人前」として考えられえるのだが、「健康保険」では130万円を超えなければ「一人前」とされない、なんともメンドクサイ仕組みになっているのだが、それもこれも「監督省庁が違う」という日本の下らない縦割り行政に起因する。
なんて理屈はともかく、年間で130万円以上稼いでしまうと「健康保険」上も「一人前」として見られるので、「お父さん」の子として「お父さん」の保険証を使うことができなくなる。
つまり「オマエも一人前なのだから、保険料を自分で払って自分の保険証を持ちなさい」というコトになるのだ。

一般的には市役所に行って「国民健康保険」というものに入れてもらい、毎月保険料を割賦で払うようになるのだが、これが結構タルい。
「天引き」で最初から引かれていれば「仕方ない」と思うものを、一度財布に入ってしまったものから「払う」というコトのなんと億劫なことか。
これでは国民健康保険の保険料未払いが社会問題となってもおかしくないのである。
昔は保険料を払わなくてもなんだかんだで発行された保険証だが、最近は払っていないと発行しない市町村が増えた。
これは当たり前のコトではある。
なので、「保険については天引きしてもらう」、つまりバイト先の会社の「社会保険」に入れてもらうというのが王道となる。
(これは「国民健康保険の保険料銀行引き落とし」とは似て非なる一面がある。詳細は1つ前の記事で。)

この時、いくら半分を会社が負担してくれたとしても、「お父さん」の保険証を使っている時よりは負担額は大きくなる。
それから、前述の扶養枠103万円と130万円の違いについて - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa628445.html
でも書かれている通り、「扶養家族がいると大変」というコトで会社も特別に「扶養手当」というものを出してくれる場合が多い。
(といっても「正社員限定」である場合が多いが。)
その金額が前述の例だと「月1万5000円」、ワタシが昔勤めていた会社で「月1500円」。
金額に多少の差はあれ、「月10万」とかにはならないのが一般的だろう。

この辺を加味して、「お父さん」の扶養の範囲内で働くことが、世帯としては最適、つまり「一番稼げる」と結論付ける論調が大半を占めているが、ソコが気に入らない。
いい若いもんが、103万だ130万だとみみっちい稼ぎで満足するなってコト。
こんな検証も、年収200万を超えていけば全て無駄になってしまう。
収入の増加が負担の増加をはるかに超えるからだ。
また年200万を超える稼ぎであれば、勤め先も社会保険に加入せざるを得ない。
(ちなみに求人広告で「社保完備」と書いてあるのはそういう意味だ。)
これでも月15万程度。
二部学生が稼げる限界かというと、それほどでもない。

この「年収200万」と「社会保険」という基盤を確保した上で、更に収入を増やすなら職場は他に求めるのが得策だろう。
一つの職場でそれ以上を求めると、拘束時間から大学生らしい「自由な時間」が取れなくなってしまう。
一般に「ブラック」と呼ばれているが、「日払い」「怪我と弁当は自分持ち」しかし「高収入」なんて仕事は結構多い。
こういう案件は、「基盤」を持っているからこそ手が出せるものだと思う。
ろくな「基盤」も確保せずにこういう案件にどっぷり浸かるから、ネットカフェで寝起きしたり山谷のホームレスになったりしてしまうのだ。

ここで、複数の職場から給料を貰った場合、税金はどうなるのか。
なんて税務署職員が感涙しそうなコトバを吐いてしまうのが常だが、税金には小額所得申告不用の原則というのがある。
「数千円の所得をイチイチ申告されては事務が煩雑になるばかりで、肝心の実際の税収にはちっとも結びつかないのだから、あんまり細かいのは申告しなくていい」といういかにもお役所的な大原則があるのだ。
だから気にしなくていい。
と言っても払いたいヒトが多い世の中なので、「そんなの簡単な確定申告で済む」とだけ答えておこう。

いずれにしても年収300万くらいまでは、屁理屈言ってないでまず稼げ、若造。