新生活応援

dubrock2008-03-22


毎年この時期になると、田舎からひとり上京して単身で新生活を始める学生さんの、引越し風景をアチコチで見掛ける。
カバン一つで上京した身としては、トラックで運ぶほどの荷物、家財道具があるだけマシ、とも思うのだが、俗に「引越し貧乏」と言われる通り、生活の本拠地を変えるということは何かと物入りであり、カネがなくなり銭湯にも行けなくなったあの頃のことを思い出すと、なんとも甘酸っぱい気持ちになる。

ひとり暮らしの大学生への親の仕送りが年々減少し、ついに平均で10万円を大きく下回ったとニュースになっていたが、この金額は「アパートの家賃」を抜いた金額なのだろうか。
「アパートを借りる」というコトは、それに付随して光熱費、電気水道ガス電話の料金がかかるコトになり、親元で公共料金の支払いとは無縁の生活をしてきた身には、たかが各3千円ほどの電気代水道代ガス代が、こんなにつらいものかと実感するものである。
今では珍しくなったが「風呂なし」の物件は、粗末ながらも風呂の付いた物件とは家賃的にかなりの差がつくもので、内風呂当たり前で「風呂のない生活」とは無縁の生活を営んできた者には非常に魅力的なものに映る。
かくいうワタシも最初に借りたアパートは「風呂なし、トイレ共同」という、世間の学生さんからことごとく嫌われる物件だった。
「銭湯に行けばいいじゃん」
と安易に考えていたのだが、午後11時には閉店となる銭湯に、毎日間に合うように帰ってくるのは、結構しんどいものであった。
粗末でも内風呂さえあれば、「たまには大きいお風呂で足を伸ばして」と洒落たカンジの銭湯も、毎日のこととなるとそんな風情などあったものでない。
「トイレはともかく、風呂だけは(アパートに)あった方がいい」
そういうアドバイスを当時聞けなかったコトが、ワタシの学生生活をより彩り深いものにしてくれた。
(「昨日風呂に入っていない」は、周りはともかく当事者としては非常に気になるものなのである。)

それから、一人暮らしを始めるに当たってまず必要となるのが「家電」と呼ばれる、冷蔵庫、洗濯機の類い。
最近では、「家具・家電付き!」という夢のような物件も多くなってきたが、いずれは必要となるもの。
できればスタートを切るこの時期に、揃えてしまったほうがいいだろう。
(引越しの度に新調するリッチなヒトも結構多いのだが・・・)
この「揃えてしまう」は、「カネを渡して自由に買わせる」のではなく、「買い揃えてやる」の意味合いが強い。
なにせ、家電など一度も買ったコトのないドシロウトなのだから、いきなりカネだけ渡されても、「どうやって運ぶ?」の段階で躓いてしまうのだ。
ワタシは「カバンひとつ」だったので、当初「冷蔵庫」というものが無かった。
夏の暑い日に、スーパーで安売りしていた牛乳に当たってついに購入を決意。
バイト先の軽トラックを頼み込んで借りて、ソイツで1ドア式の冷蔵庫を買ってきたのだが、大きな電気屋では「宅配サービス」が当たり前、なんてハナシは知らなかった。
ちなみに、その時買った1ドア冷蔵庫には、その後何年にも渡って苦しめられるコトになる。

そんなワケで、食うに事欠かないぐらいの経済的援助が出来ないならば、「(少々通学に時間がかかったとしても、)親元から大学に通える環境を整える」が、子を持つ親の最低限の必要条件であるとつくづく思う。
少し前に、自称「東大院生」を名乗る輩が、「学歴は親の年収に比例する」と書いて騒動になったが、「当たらずとの遠からず」の部分はあって、実際苦学生だった「ホリエモン」だって、東大に入ってはいるが卒業は出来ていない。
対して朝のテレビで、オヅラさんの横に居るだけのササキョウさんが卒業できているというのは、つまりはそういうコトだと思うのだ。
ワタシは「生活」というものに追われてそれどころじゃなかったが、入学早々から連日新入生歓迎コンパに繰り出し、文字通り「学生生活をエンジョイ」できるくらいでないと、あの空気には馴染めないと思う。

そんなコトを考えていた矢先、「慶大が入学金40%削減、近く全廃 「優秀な学生集めたい」(産経新聞)」というニュースが配信された。
それはそれで素晴らしいコトだと思うが、しかしこのニュースよく読むと、

慶応義塾大学(東京、安西祐一郎塾長)は21日、平成21年度から入学金を約4割引き下げ体育実習費を廃止するなど学費の抜本見直しを発表した。
安西塾長は「国際的に優秀な学生を集めるため、諸外国にない入学金を近く廃止する一歩としたい」と説明。
徴収趣旨があいまいとの指摘もある入学金廃止を視野に、世界標準の学費制度で人材を集めるねらい。
文系学部では授業料が引き上げられ、4年間の学費総額はアップするが、奨学金制度の拡充や家賃補助の創設で支援する。
やっぱり営利目的で運営されている私学でしかないのである。
現行34万円の入学金を20万円に引き下げ8000円の体育実習費も廃止する。
ただ、文系学部の場合、年間73万円の授業料を78万円に、施設設備費8万円を18万円に引き上げる
在籍基本料6万円を創設し、留学などで休学した場合、施設設備費と、現行の授業料に代わって在籍基本料を払えばよい。
意味の不明瞭な「施設設備費」はそのまま、「在籍基本料」なんて、ただの値上げの口実としか思えない。
初年度納入金は122万円(20年度比4・3%増)、4年間の納入額は428万円(同17・8%増)となるが、項目を簡素化し、「グローバルな学費体系にした」(安西塾長)。
一方、学生の負担軽減のため、20年度から1人当たり12万円の家賃補助を開始。
1学年当たり約400人、総計約1600人に4または6年間支給する。
これで「グローバルな学費体系」とは聞いて呆れる。
また、留学生を対象に10億円の奨学基金を創設する。
慶大では現在約870人の留学生を27年度までに1500人に増やしたいとしており、優秀な留学生を集める“切り札”に、との思惑もある。
6年後には約25億円の増収になるが「教育内容などで学生に還元したい」としている。
結局、合格通知とともに送りつけられる「保護者の皆様へ」という、「一口数十万円の寄付を数口ほどお願いしたい」という内容の印刷物。
「私学の暗部」については全面スルーなのである。
少子化の影響によって、名前書くだけで入れた三流校は今後淘汰されると言われているが、天下の慶応と言えどもこんなコトをしていて大丈夫なのであろうか。

まあそんなコトはともかく、たった4年しかない大学生活を、有意義に楽しんで頂きたいと思う。
院生の名を借りた、体の良い就職浪人にならないように。