江ノ電になれない

連休最終日、天気があまりにも良かったので、銚子に向かってみた。
目的はココ

地球の丸く見える丘展望館

「地球の丸く見える丘展望館」だ。
たしか高校生の頃に、一度行った記憶がある。

太平洋に突き出した「犬吠崎」。
周囲に遮るものの何もないロケーションにあって、小高くなった丘の上の展望館。
ネーミングの「地球の丸く見える」は、「全視界に入る限りの水平線を眺めると、両端が丸く、地球の丸さを感じることができる」の意味だと思うのだが、「360度の展望が見られる意味ではないか」と隣りのカップルがモメていた。

ま、意味はどうあれ、この絶景はスゴイ。

で、折角銚子まで来たのだから、話題の「銚電」、「銚子電鉄」を見てから帰ることにした。
「無くなる前に」ね。w
犬吠駅」に車を停め、その銚電に乗れるようになっているらしい。
時刻表を確認すると、運行は午後10時まで。
今からでも充分銚子まで往復できる。
「ぬれ煎餅」で応援する手もあるが、ココはストレートに、本業である「運賃収入」で貢献したいトコロ。

そんなワケで、犬吠駅銚子駅を往復できる、「犬吠崎レジャークーポン券」なるものを購入して、ホームで待つことにする。

ホーム

のどかだ。
休日というコトもあって、「鉄」とおぼしきオッチャンが、ベンチでおにぎりをほお張り栄養補給している。
銚子行きの電車が来るまで20分。
さてナニをしようと考えていると、外川行きの「デハ1002」が来た。

デハ1002

あまりの雄姿に思わずカメラを構え、そして見送る。

雄姿

そして周囲はまた、静寂に包まれるコトとなる。

静寂

もしかして、さっきの「デハ1002」が外川で折り返して来るんじゃね?

なんて思っていたら、やっぱりそうだった。
その、「銚子行き」のデハ1002が来る頃には、いかにも「鉄」のカップル多数と、話題性で乗りに来ちゃった「やや鉄」のカップルがチラホラ。
休日というコトもあり、完全に「観光路線」と化していた。

ほどなくデハ1002は発車。
満席である。
ワンマンである。
それ以上に、スピードが乗ると跳ねる跳ねる。
線路が、路面の沈下によって波打ってしまっているのである。
酔いそうな不安感を感じながら、次の君ケ浜駅に到着する。
無人である。
そして、やはりボロい。
「カネがない」と聞いていたので、大体の察しはついていたが、やっぱりボロい。
壊滅的なほど、ボロい。

車内の広告といえば、「鉄子の旅」ぐらい。
それ以外に車内の掲示物にも、カネがないなりの配慮がされているようだったが、「貼りっぱなし」の感が否めない。
休日運行のこのデハ1002も、古いとはいえ汚すぎだ。
そして、笠上黒生(かさがみくろはえ)駅で乗ってきた車掌を見て、その違和感は確信へと変わった。
いくら「カネがない」とはいえ、ヨレヨレの制服はズボンのヒザが抜け折れ目もなく、靴はただの運動靴。
「カネがない」というモチベーションが、滲み出たような車掌だったのだ。
これが「カネがない」という演出なら、根本的に間違っている。

ダメを出せばキリがない。
仲ノ町駅本社事務所周辺のゴミの山。
ラミネーターすらかけずに貼りっぱなしの掲示物は湿気でヨレヨレになり、県警からのお知らせはセロテープで貼られている。
窓ガラスは曇り、シートは薄汚れ、おおよそ「掃除された痕跡」すら見当たらない。

「人員が足りない」

それも格好の言い訳になろう。
しかし、この潰れかけた鉄道を存続させたくて、自らの意思で残っているのではないだろうか。
「ぬれ煎餅」が頼みの綱と言うが、それ以前に、いくらでもやれるコトはあるだろう。
犬吠駅にはあまり愛想のよくない職員さんが2人居た(女性)が、トイレが毎日掃除されているようには見られなかった。
1日10分でもいい。
できることから、していく姿勢。
そんなものが微塵も感じられない銚電社員の皆様。
貧乏会社がイヤなら、今すぐ辞めたほうがいい。

実際に乗るまでは、「江ノ電」に出来て、「銚電」に出来ないコトとは何だろう。
桑田佳祐にでも頼んで、「銚電」をテーマにした歌でも作ってもらえば、なんとかなるんじゃね?
なんて甘いコトを考えていたのだが、このモチベーションの低さは、「そりゃ横領もするさ」というレベルである。

交通インフラとしての、鉄道の役割は終わったと思う。
例えば銚電が廃業したとして、利用者は「困る」と騒ぐに違いない。
実際、コレを利用していると思しき学生さんも居た。
しかし、無くなったら無くなったでバスによる代替輸送がある。
なにも、専用の細長い敷地内で、一両編成のポンコツを無理矢理運行させる必要性など、とっくに無くなってしまったのだ。
そしてその対価としての、小銭を徴収するビジネスモデルも崩壊してしまっている。
かのJR東日本ですら、首都圏以外では採算割れではないだろうか。
そんな、新車購入はおろか、車検代すら出てこないローカル線を、午後10時過ぎまで運行させちゃってる無駄さ加減。

犬吠駅売店が、採算面から午後4時閉店なら、電車だって午後4時終電でいいではないか。
そんな観光路線としての展望を考えるに、惜しむらくはその路線区間
せめて君ケ浜駅周辺だけでも、海沿いを走るコトは出来なかったのだろうか。
竹薮の中を銚子まで往復し、マイカーで君ケ浜に差し掛かって、つくづくそう思った。
まあ、ココまで資金難となってしまっては、路線の延伸など夢のまた夢、なのであろうが。

コレを銚子観光の目玉に据えていくならば、銚子市役所から清掃員の派遣があったって、いいハズだ。
ナニも高速を伸ばせば済むってハナシでもないもんだと、そんなコトを考えた銚電の旅だった。

こんな絶景を持っているのに、たいした観光客が来ない理由って、意外と本質的なものだと思うぞ。