真ん中は、「しなくてもいい」んじゃなく、「死んでもいい」んです

dubrock2008-06-02


むかし、手伝いで引っ越し便のトラックに同乗したコトがある。
高速道路走行時の、前席のシートベルト着用が義務付けられた頃のハナシだ。
まだ切符を切るとかいうコトはなくて、料金所のオッサンがチケットを渡しながら言う。
「はいっ、手を上げてー」
それで、ベルトをしている「フリ」をしていると、スルスルスルーっとベルトが巻き上げられ、コイツをしっかり付けるまで、オッサンはチケットを渡してくれない。
それだけのコトだ。
今思えばのどかな時代だったと思う。

車が料金所に差し掛かり、ドライバーさんが助手席に声を掛ける。
「悪いけど(料金所を)抜けるまでベルトしてくれるか。」
言われて、3人掛けの真ん中に座っていたワタシもベルトを探すのだが、それらしいものがドコにも見当たらない。
その時に言われたのが、今日のタイトルのコトバである。

もちろん、本来真ん中の席にだって、シートベルトは装備されている。
ただ、2トン標準ボディのキャビンは狭く、法的な座席幅は満たすものの、3人乗るには少し窮屈だった。
それに、運送便としては3人はおろか、助手席への2名乗車も滅多に無かった時代だ。
それで、「真ん中のシート」は荷物置き場としてカスタマイズされる場合が多く、自然とそのシートベルトも、シートの下へ何年も押し込まれたまんまになっていたワケである。

「しなくてもいい」とは言っていない、「死んでもいいんだ」、はいわゆるこういう状況へのエクスキューズというか、ケーサツも思わず笑わされたら、一度だけは見逃してやるといったローカルルールが通用した、「古き良き時代」だったのである。

後部座席でのシートベルト着用が義務付けられた。
もともと、後席は腹部を固定する「2点式」が申し訳程度に付いていただけだったのだが、いつの間にか片方の肩も固定する「3点式」が装備されるようになっていた。

それでも、「真ん中」は2点式。

後席の「真ん中」は乗る頻度が少ない?
それと、「2点式シートベルト」との因果関係は?
2点式でも、3点式と同等の効果が得られるのならば、何故左右はわざわざ3点式を装備した?

結局、「真ん中は死んでもいい」20年前と、何にも変わっていないのである。
法整備の都合上、シートベルトを装置出来るようにしているだけなのである。

大型観光バスが高速道路で横転して窓ガラスが破れ、投げ出された乗客が多数死亡する事故が発生した。
「こういう場合にも、車外に投げ出されない構造にしてもらわないと。」
識者ぶったコメンテーターが眉をひそめて言う。
機動隊のバスで観光案内をしろとでも言うのだろうか。

「オープンカー」は屋根のない開放感が魅了の車体形状だが、横転時の乗員保護には限界がある。
「ロールバー」を付けるという対応策もあるが、効果は限定的である。

誰も転ぶコトを前提に2輪車には乗るまい。
「危ないからやめろ」
と言われて、
「はいそうですか」
と従うくらいなら、ハナからバイクなんか乗らねぇ。

シートベルトの着用が法律で義務付けられていないから、(特に高速道路での)事故時に後部座席の乗員が車外に放出されて死亡するのだろうか。
取り締まりの為の規則に思えてならない。
そのうち、「核シェルターから出ることを規則しないから、紫外線で皮膚ガンになった」とか騒がれるに違いない。

ちなみに、高速バスを頻繁に利用するワタシは、規制前から着席時のシートベルトの着用を心掛けている。
誰だって、複数の後続車両に轢かれて加害車両の特定は不能、ではイヤだろ?
『自己責任』って、そういうコトだと思うのだが。