居酒屋タクシー

dubrock2008-06-09


何事にも、「ほどほど」というのがある。
そこへいくと、この「居酒屋タクシー」は度を越えていた。
「やりすぎ」だ。

もともとは、「高給取り」の代名詞航空会社のフライトスタッフに対して、「おしぼり」を出したのが起源とされる。
早朝深夜のフライトスタッフは、公共の交通機関が利用出来ないので、タクシーを利用せざるを得ない。
ソコに目を付けたのだ。

その後、銀座で豪遊する社長さん、大手企業の「ソコソコのポストの人」、そして今回の「霞が関官僚」と、それぞれがそれぞれにターゲットを絞り「営業努力」を続けてきた。
「高級車を用意する」というのもその一つで、誰だって同じ料金なら、法人タクシーのポンコツに乗るより、「セルシオ」だ「クラウン」だに乗りたいと思う。
これは当たり前のコトだと思うのだ。

たまたま拾ったタクシーが、そんな「乗り心地の良い車」だったとして、降り際に

「次回も宜しければお電話下さい」

と連絡先を書いた名刺、それに電話代代わりにテレホンカードなど渡されたとする。
そしたら、

「ああ、何と気の利いたタクシーなんだろう」

と。
そして、

「今度もお願いしようかな」

と思う。
それは、人間なら誰だって同じだろう。
それから顔馴染みになり、ビールなんか用意してくれていたら、もう他の車には乗れないハズだ。

そういった接待行為が、車両運送法に抵触するかどうかという問題はある。
金券の譲渡は実質的には「値引き」であり、さらに進んでタクシーチケットの金額を水増しして記載し、その分を現金でバックしたら「横領」になる。
そしてそれが「霞が関官僚」であれば、文字通りの「税金泥棒」である。
何事にも、限度というものがあるのだ。

今回の問題というのは、そんな一本数百円の接待というチンケなハナシではない。
それよりも、ある特定の客「しか」乗せないタクシーが居て、彼らが官公庁のある特定の部署を独占し、同業者であっても新規参入を一切排除する。
その「やりすぎ」が問題なんだと思う。

ただ、独自の営業行為が全て悪いかというと、それは違うと思う。
法人タクシーの乗務員は薄給。
年収350万では生活して行けないと言うが、中には高給取りもいる。
彼らはどうやって、歩合65%の月12回勤務で、月給50万を実現させているのか。
ヒトと同じコトをしていたのでは、有り得ないハナシなのである。

今回の「居酒屋タクシー」はやりすぎた。
やりすぎて騒がれてしまっては仕方がない。
次のシノギを探すしかないのである。
真新しいシノギは模倣され、普遍化して真新しさを失う。
そんな中でも突き詰めて、抜きんでた「出る杭」は打たれる。
結局、世の中なかなか「一人勝ち」はさせてもらえないのである。

でも、そんな50億ものタクシー代支出によって、高級官僚は都心からはるか離れた住宅地に一戸建てを買うコトができ、出勤時には「グリーン車」を利用し、JRは2階建てグリーン車を2両も連結して、朝の混雑時にも運行できる。
タクシーのほうも必要以上の酒につまみを購入するし、仕事の車には不釣合いな高級車を購入するし、高価なハイオクガソリンも使用する。
そういうので世の中が回っているんだとしたら、むげに締め付けていいものだろうかとも思ってしまう。

何事も「腹八分目」。
そんなコトバを思い起こした、「居酒屋タクシー」のバッシング報道だった。