八甲田山死の彷徨

dubrock2009-07-19

一報を聞いた時は、「またか」と思った。
「また、シロウトが山を甘く見て」と。
10人が亡くなる惨事となった、北海道・大雪山系での遭難事故のことである。

全容が明らかになるにつれ、その凄惨さに驚かされる。
「夏山ハイク」なんてあまっちょろいものではない。
体力の尽きた者から一人一人置き去りにされる、まさに「死の行軍」だったのである。

本州の夏山と違い、北海道のこの時期の夏山には「フリース」などの防寒装備が必要

なんて当初しきりに言われたが、犠牲者のほとんどが「凍死」。
そんな、多少厚手の登山用フリース一枚で、どうこうなるレベルではないだろう。
出発してはいけない天候だったのである。

この場合気になるのは、やはり「ガイド」のこと。
「ガイド」とは言っても、この場合ただの道案内という意味合いは薄く、寄せ集めのツアーパーティーを率いる「リーダー」的な存在が推察される。

そのリーダーが、・・・

今回明らかに、3度のミスをした。

最大のミスは、強風を押して出発したこと。
朝の段階で強風を理由に出発を遅らせていたのだから、その悪天候を十分認識していたのだろう。

なのに、山小屋を出発した。

そりゃ、ツアー日程だったり、メンバーからのプレッシャーだったり、「出ざるを得ない状況」があったのだろうが、荒天での出発は軽率であった。

第二のミスは、ビバーク地点に衰弱者を置き去りにしたこと。

「テントを張ってビバークすれば、大丈夫」?

じゃあその、衰弱者の救護は誰がすんのさ。

「山では、自分の身は自分で守る」

なんてキレイごと聞いてんじゃないよ。
60がらみの中高年の、「お手軽夏山ハイク」っていう触れ込みだったんでしょ?
「全員を無事に帰す」のが、リーダーの責務なんじゃないのかなぁ。
「先に下山して助けを呼んでくる」
は、イイ判断とは言えないと思うのだが。

そして3つ目のミス。
それは、下山組からの脱落者を、その場に置き去りにしたこと。

聞きたいのは、この段階で「遭難」を認識していたか否かなんだよな。
衰弱して歩けなくなった隊員を「置き去り」なんて、正気の沙汰じゃない。

「オレも必死だった」

なんて言うなら、もう二度と山になんか登らないで欲しいし、「ガイド」なんか以ての外だ。
ヒトを案内して山に入るレベルじゃないのである。

そんなワケで、あまりにグロテスクで聞くに耐えなかった中高年が凍死するハナシ。
「そこに山があるから」
だけで登るのは、是非とも止めて欲しい今日この頃なのである。