個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律

dubrock2010-05-11

もしアナタが、ある日突然会社をクビにされてしまったらどうするだろうか。

「クビ」である。

「解雇」とかいう法的な手段を取らずに、ある日突然「もうあしたからは来なくていい」と一方的に言われてしまったら、・・・

そして、「手続きだから」と「退職願」への署名捺印を求められたら、・・・

普通、まあそれなりの体をなしている会社であれば、総務とか人事とかいったセクションに「コンプライアンス窓口」みたいなのがあって、ソコが相談に乗ってくれることになっている。
しかし彼らとて会社という組織の一部。
最終的に会社側の非を認めるということはまずなく、コトの成り行き次第ではココが窓口となって、時に顧問弁護士と一体になって、非合法な手続きを合法化しようとするのである。

こうなると外部からの支援、とはいかないまでも、助言的なものは頂きたくなる。

とりあえず思い浮かぶのは「ロウキ」。
各地の労働基準監督署である。
名前の通り労働に関する不法行為を監督してくれる機関のようであるが、ココの「総合労働相談コーナー」というのは1度出向いたくらいでは、あまり力にはなってくれない。
それは過去に、「労基はアテにならない」というハナシで触れた。

では、「レンゴー」はどうだろうか。
県ごとに独立した組織をとることになっており、各県ごとに「連合○○」と都道府県の名前が入る。
「今」現在で政権を担っている“民主党”の支持母体であり、会社との交渉の間に入ってくれる(団体交渉)組織だ。

しかしここは、表向き「雇用の継続を主眼に置いた交渉」を行うトコロであり、金銭を要求することなないという。(本当か?)
また交渉相手の本社所在地が他県にある場合には、本社を管轄する連合組織に加入しなければならない。
また、団体交渉を請けてくれるかどうかは、担当者の心象次第というのも悩ましい。
つまり、オールマイティではないのである。

では、「こんな扱いを受けた会社ではもう働きたくない」といった場合には誰が力になってくれるのだろうか。
連合のオジサンがそっと教えてくれたのが、「あっせん」というもの。

正しくは、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく紛争調整委員会によるあっせん」と言い、申請書の提出先は各都道府県労働局総務部企画室になるが、・・・
いきなりココへ行っても、一度目は無駄足になるだろう。

まずは近くの労働基準監督署
ココの「労働相談コーナー」で、「あっせん」という制度を利用した旨を申し出ると、オジサンが制度のあらましから詳しく説明してくれる。

労使間での解雇や賃金トラブルなどには、労働審判少額訴訟といったものが入り口になる場合が多いが、近年その申立て件数は増加の一途を辿り、受け持つ地裁簡裁はパンク状態である。
この状態を解消する為に、平成十三年に作られたのが「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」だそうだ。

目的はつまり、「ハナシにならない!裁判だ!」となる前の1クッションとして、都道府県労働局長が間に入り、話し合いによる解決を促すというもの。
これにより労働問題の識者からなる「紛争調整委員会」が招集され、話し合いの「あっせん」をしてくれるのである。

この場合注意すべきなのは、「連合」が雇用の継続に主眼を置いているのに対し、「あっせん」は労使紛争の金銭的な解決を主目的に行われるということ。
「未払いの残業代」や「解雇予告手当」、では少額訴訟になってしまうが、これを「〜に相当する金額を慰謝料として」とすることにより、解決してもらおうというのである。
(「〜に相当する金額」だから、会社側がその支出(〜の部分)を認めたとは限らない、というのがミソなんだなぁ。)

費用は無料。

そりゃ、利用しないテはないよな!?

な制度なのであるが、利用できるどうかは労働基準監督署「労働相談コーナー」のオジサンが、事案を制度に照らし合わせて、「当てはまる」と判断してくれるかどうかによる。
それさえクリアすれば、その場で申請書用紙も分けてくれるし、申請書の提出先である各都道府県労働局総務部企画室も、スムーズに書類を受理してくれることだろう。

この制度、ココまで出来上がっているのに、「あっせん」への参加も、「あっせん案」への受諾も“任意”、つまり参加者の自由意志であるというのが寂しいトコロ。
「話し合いに出てこない」とか、「話し合ったが、やっぱり納得できない」とかいう場合には、やっぱり裁判沙汰になってしまうのである。
(強制力を伴うほどの「実績」が、まだなんだろうなぁ。)
とはいえ、都道府県労働局長の指示により、識者によって行われる「あっせん」に「従わない」となれば、会社は順法精神を問われかねない。

そんなワケで、この制度がどこまで有効に運用されるのか、興味津々の今日この頃なのである。