企業が居直った時に、法律とはいかに無力なものか
マツダの期間従業員が、元居た職場を“マツダの車で”暴走するという事件が起きた。
加害者であるその「元従業員」の家族は、「本人がリストラされたと言っていた」と言い、会社は「自己都合による退職」と言う。
まあ、よくあるハナシである。
「よくある」?
んな、「よくある」なんかで済まされるかよ!
なのだが、労働局、労働基準監督署、ハローワーク、労働問題に詳しい弁護士、そのどれもが口を揃えていうのが、「それはよくあること」なのである。
会社に来るなと言われる。
ロッカーの荷物を片付けられる。
仕事を与えられない。
そして、「退職願」の提出を求められる。
そして職場に出なければ、「このままでは無断欠勤になってしまう」と言われる。
そんなコトが、「よくある」のだそうである。
ここで、「退職願」の提出を頑なに拒んだ場合はどうなるだろうか。
この場合企業は、「所定の書類が提出されていない」という理由で、離職票の交付を拒んでくる。
「所定の書類」とはもちろん、「退職願」である。
「離職票」が出されないとどうなるか。
本社を管轄するハローワークから「離職票の交付請求」が行えるが、これも「(本人から)所定の書類が提出されていない」と言われれば無意味。
会社にとっては痛くも痒くもなくて、労働者にとっては失業給付はおろか国民健康保険にもは入れない。
それが、「離職票の交付拒否」だったのである。
あとは裁判に訴えるか、「連合」に助けを求めるか、ぐらいしか、道は残されていない。
ちょっと前に、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律という記事を書いた。
労働審判や解雇予告手当ての支払いを求めた少額訴訟などの頻発により、パンクしそうな司法手続きを円滑に行うための法律なのだが、これとて「強制力が無い」という部分は変わらない。
この場に至っても、「自己都合」以外での離職票の交付は行えないと突っ張られたら、もうあとは、小銭をせびるぐらいしかできないのが現実なのである。
(もちろん「退職願」の提出と引き換えになる。)
「離職票」には、「離職者本人の同意を確認する欄」というのが設けられてはいるが、その後ココに異議を書き込んだところで、「退職願」なんてものを証拠に抗弁されれば、一個人でこの記載内容を覆すことは不可能に近いだろう。
つまり、離職票に設けられている、「自己都合」と「解雇」以外の理由、「まあ解雇じゃないにしても会社都合」といった選択肢が、いかに機能していないか、その事実を、職安の職員は今一度認識する必要があると思うのだ。
(他方で「不正受給」という問題も顕在化しているのだが。)
今回の事件、加害者である「元従業員」がソコまで追い込まれたかどうかは知らないけれども、こうするしかない程に、職場を追われた恨みというのは容易に想像がつくというもの。
平然と記者会見に応じる「マツダ」の言い分を聞いていると、吐き気のしてくるハナシだった。
こんなの、「よくあるハナシ」やでぇ。。。