そんなに、珍しいですか?

村上ファンドへの拠出が問題になっている日銀のフクちゃんですが、オリックスを仲介役としたその1千万円の投資について、「第36号投資事業組合」なるものを通しての投資であったというのが、朝日新聞の一面記事のようです。
さらにその投資事業組合を束ねる「親」投資事業組合が出資された資金を集約して、最終的に一括して村上ファンドへ投資されていたことから、「出資者を特定できないように擬装していた」なんて批判もされていますし、さらに「第36号投資事業組合」に出資していたのが福井氏一人であるらしいことから、「オリックス日銀総裁専用に用意した事業組合だ」なんて言い方もされています。

投資事業組合」というコトバ。
一般的には耳慣れないコトバで、「そういえばライブドアのトキもたしかコレ使ってたよな」程度の認識しかされていないかもしれませんが、「オリックス」という会社を語る上では知っておかなければならないコトバ、いや「オリックス」という会社の金融戦略を一言で言い表すのがこのコトバ、と言うコトができるのではないでしょうか。
またこの「投資事業組合」について登記や情報公開の義務がないというのが、「法律の抜け穴」みたいな認識で語られたりもしますが、別にこの組合を使うコト自体に違法性はなく、責められるべきはこういう制度を見過ごした立法府、いや、日々進化し続けるこの種の金融活動に包括的な法規制を敷くというのは、酒税の時と同じで「いたちごっこ」であると思うのです。

そもそもオリックスという会社は、「オートリース」が主体の「モノ」を貸す会社です。
それゆえ「カネ」を貸す企業を管轄する財務省の管理下に置かれず、その適用される法律の違いから金融業界を席巻してきたというのがワタシの認識です。
営業マンは「カーリース」を名目に企業を訪問し、「無尽」を現代化したシステムによる運転資金融資を持ちかける。
この現代版無尽のシステムが有限会社と、その有限会社を運営する有限責任組合を組み合わせた斬新なものであり、なんでそんなものを開発できたのかと問うワタシに営業マンは、「管轄する省庁がヨソとはちがいますから」と自慢気に言ったものです。

このコトを思えば、オリックスがわざわざ日銀総裁の為に用意した投資事業組合というよりは、小口の投資口を集約するために用意していたシステムにフクちゃんが乗っかっただけ、という結論は容易に想像でき、
わざわざドン宮内に「私的に」お願いするまでもなかったというのも、すんなり納得できるハナシではないでしょうか。
つまりはこの問題をこの部分で追求し続ける民主党には、「オリックス」という会社がちっとも分かっていないという事実だけが残ると思うのです。

また投資事業組合への投資であれば村上ファンドの規約は適用されないので、「いつでも解約できたハズだ」なんて言うヒトまで出てきています。
それもこのテの金貸しが、自分の資金で立て替えてまで出資者に返金などしない、という常識を知らない発言で、後から思い出して汗をかくくらい恥ずかしいコトでしょう。

さらに日銀総裁就任当時、保有していた株式は含み損を抱え、村上ファンドへの投資額も元本割れしていたというのが、「解約」に踏み切れなかった要因であり、「損切り」できない資質の悪さとまで言われていますが、知った風に「損切り」言って損失を作り続ける一般の投資家に比べれば、塩漬けにできるその忍耐力を賞賛するべきではないでしょうか。
もし当時損切って銀行預金なんかにシフトしていたとしたら、資産の倍増はおろか当初の元本すら回復できていないであろうことを考えると、その投資手腕はお見事であり「流石は金融のプロ」と感心してしまうのです。

いずれにしても「投資事業組合」ごときでこの過剰反応には、マスコミの「経済オンチ」を痛感せざるを得ず、やはり数学の出来ない文系組の業界なんだな、とひとり納得してしまう今日この頃このなのでした。