水ビジネス

東京に出てきたばかりの18の頃、北海道出身の友達が水道水をペットボトルに入れて「カルキ抜き」をしてから飲んでいた。
ちょうど「美味しんぼ」の連載が始まって第1回、山岡さんが「利き酒」ならぬ「利き水」の芸を見せていた頃で、「まずくてとても飲めない」という彼を、ナニを分かったようなコト言ってやがると思っていた。
エビアンやボルビックといったミネラルウオーターの走りが店頭に並び始め、誰が買うんだろうと思っていた頃だ。
もう15年も前のことになる。

時代は変わり最近では飲用に向かないとされる「硬水」がダイエット向きとして重宝され、水に炭酸を入れただけの「炭酸水」や、酸素濃度を高くした「酸素水」などの付加価値商品がソコソコの高値で販売されている。
もう富士山麓の天然水や海洋深層水では商品の優位性が保てないということだろうか。

ハウス「六甲のおいしい水」が2L200円で販売され、小高いイメージのエビアン・ボルビックが主流のミネラルウオーター界の衝撃となったが、その後各社2L200円で売れる水をこぞって開発して商品は陳腐化。
価格競争へと進展していった。
「水」をパック詰めして売るだけのものだから、削れるコストといえば容器代と運賃くらいのもの。
大ロット配送でしのぐにしても運賃コストは各社横並びだから、他社よりも削れる部分といえば「容器」くらいとなる。
最近の水のペットの頼りない位の柔らかさを見るたびに、「究極のコスト削減」を感じてならない。

最大のコストが「容器」ならば、とリターナブル容器で水を宅配する新ビジネスまで登場しているが、重さの割に運賃のとれない水の配送ではなかなか旨みが出てこないのではないだろうか。
気温28℃を超えると消費者の購買志向がアイスクリームからかき氷に変わるらしいが、水にもそういう消費動向の変化があるらしく、暑い日には甘いジュースよりも無糖のお茶や水の方がよく売れる。
そんな「夏の水」の運搬は、風物詩とはいえ毎年大変だ。

わざわざ運ばなくても済むようにと、多額の費用を費やしパイプラインのインフラを整備しても、「健康的でない」という理由で飲用されないというのだから、日本という国はいかに豊かになったことだろうか。
その「水」をビジネスチャンスとして捉えようとする兵どもの夏の陣。
今年は誰が、水ビジネスの勝ち組になるのだろうか。