ハウルは魔法使いだったんですね

スタジオジブリの最新作「ゲド戦記」の公開に合わせて、「ハウルの動く城」がテレ
ビノーカット放映されました。
次作のプロモーションの為に前作をテレビ放映するという、「もう今さら劇場でアニ
メ見れるかよ」な年代にとっては非常に嬉しい慣習により、意識から忘却される前に
作品を鑑賞することができるというのは喜ばしいコトです。
とはいえ、リアルタイムで観れずにビデオ録画したんですけどね。

スタジオジブリ宮崎駿」と勘違いして駄作を掴まされた以前に比べると、非宮崎
作品のグレードもそれなりに上がって来たので、今ではそんなに気にするコトなく鑑
賞できますが、それでも宮崎作品はよく書き込まれているものだと思います。
ただ今回のハウル、正直「動く城」はどんなメカニズムで動いているのかとそればか
り気になっていたのですが、あっさり「魔法で動いているだけ」なコトに一番落胆し
ました。
そういうの、ワタシだけなのでしょうか。

作品冒頭、ゆくゆく90過ぎのおばあちゃんの声も担当するとはいえ、「さくら」の
声の小娘にとてつもない違和感を感じ、鳴り物入りの「声優キムタク」はどっからど
う聞いても「キムタク」以外の何物でもなく、それでも美輪明宏の魔女があまりに
ピッタリだったので作品に入っていけるという、なんとも微妙な作りのものではあり
ました。
(声優の声の出し方が独特なんだよなぁ・・・)
だいたい、「19世紀末の欧州の近未来画家たちが思い描いた魔法と科学が混在する世
界が舞台」と言ったって、あからさまに物理の法則に反して空を飛ぶ飛行機だけは、
どうしても受け入れられないものがあります。
その動作原理だって動力源と動作機構にしたって、ナウシカ以上に無理があると思
(以下自粛)

まぁそんなコトよりも、途中から極端に反戦色の強くなるストーリー展開にもっと落
胆。
子供から大人まで多くの人に愛され、海外でも高い評価を得ているとはいえ、ネーム
だけでとりあえず売れてしまうポジションにありながらこのあからさまな「反戦」主
張。
それも「何となく訴える」という「火垂るの墓」式ではなく、主人公の口からハッキ
リ、それも何度も言わせてしまう「分かり易い」演出。
どうもこういうのは苦手です。
ネームもカネもあるスタジオジブリ宮崎駿なのだから、もう少しなんとかならな
かったのだろうか。

さらに後半のクライマックスに向かって、ソフィーがカルシファーハウルの契約の
秘密を見つける下り。
ココが物語一番の見せ場というか、どういうきっかけでその契約の秘密を見破るのか
一番興味を持っていたワケなのですが、そこで突然幻想的な映像世界に持ち込む手
法って日本映画でもよくある展開なんだけど、こういうの見る度に、どうも制作費と
公開までの時間的制約により、やっつけで完成されたとしか思えないのです。
(だってハウルの少年時代にタイムスリップして、ハウルカルシファーが契約する
場面を垣間見るなんて、オチとしては一番つまらないでしょ?)
もしくはダヴィンチの作品の殆どが「未完」であるように、途中で完成させるのに飽
きちゃったか。
いずれにしても、「(締め切りギリギリで)絶対最後に描かれた」という印象しか残
らなかったです。
(もしこの場面が製作の初期で描かれたのだとれば、その世界がワタシには理解でき
ないというコトなのだろうが、あのカンジはそうぢゃないよね。)

これが「世界で絶賛」の作品だというのがちょっと理解できないまま、カブ頭の声優
が今一番ノッてる大泉洋で、その声が最後でようやくマトモに聞けるというのはいい
けれど、「実は隣国の王子」というベタなオチは、どんなもんだろうと思う後味なの
でした。
あの大泉洋松たか子とねぇ・・・