ウンチク

本人には失礼なハナシなのだが、見た目の印象とは裏腹に意外な趣味を持っていて、その凝りようというか、ウンチクというか、こだわりというか、そのマニアックさに驚かされるコトがある。
今日話題になるオジサンも、そんな『意外性』のひとりだ。

そのオジサン、見た所フツーの60歳。
ちゃきちゃきの江戸弁意外には特に変わったトコロもない、ロマンスグレーの紳士だ。
もう孫も4人もいるという。
そんな初老の紳士が『ボーリング』と言っても、黄金時代に青春を送った年代だから、とたいした違和感もない。

ところがそんなオッサンが、『休みの日には必ず10ゲームは投げるようにしている』と聞くと、途端にハナシは面白くなってくる。
ホームグランドにはロッカーを借りていて、マイボールは常時3コ、マイシューズは2足を交互に使うとなれば、かなり本格的です。

なんでも若い頃に二年ほど、プロボーラーに付いて教わった時代があったんだとか。
当時プロ転向も考えたのだが、並の才能では埋もれてしまうのがプロの世界。
当時盛んにアチコチで行われたアマチュア大会を転戦し、気楽に『荒らす』道を選んだそうだ。
『アマチュアなら負け無しだよ』と凄むあたりに、往年の姿が見え隠れする。

ボールにも寿命があって、100ゲームも投げると『おいしいトコロ』は終わってしまう、とか、素人用のレーンとはワックスの仕上げが違うし、ヘタな仕上げならすぐフロントに文句言う、とか、プロは自分でワックスを仕上げてしまう、とか、30ゲームくらいでワックスの具合が変わって来るので、その変化を見越して投げなければならない、とか、ただ聞いてるには勿体ないネタがポンポン飛び出してくるのです。

で、最近試合の方は?
表向き『ボール3コも担いでいくのが億劫』であり、『ボール1コだけ持ってなんか行かねぇ』なんだそうだが、本当のトコロは『若いヤツの球に球威で劣る』であり、『それが悔しくてならない』らしい。
勿体ないと言えば勿体ないこだわりなのだが、そういうこだわりの集大成がオジサンの『ボーリング』なのだろう。

ボーリング場にはプロがいて、親しくなれば師弟関係の様になって、コーチもしてもらうし、試合には花束持って応援に駆け付ける。
そんな、『古きよき時代』を思い描きながら、オッサンの青春であり、人生の一部でもあるボーリングのウンチクを聞く。

その初老の紳士の、少年の様な瞳の輝きに、なんだかボーリングがしてみたくなった一日なのでした。