キッザニア東京

親の職業を知らない子供が増えているという。
「増えている」というのは比較の対象があってのことで、その比較の対象がどうであったかは知らないのだが、とにかく「以前に比べれば」増えているらしい。

俗に「屋」が付く商売は儲からないと言われるが、以前子供が親の職業を今より知っていた時代というのは、その「屋」が多かったのではないだろうか。
八百屋であったり魚屋であったり文房具屋であったり。
それがいまではスーパーや百貨店に取って代わり、比較的分かり易い「売り場担当」であっても移動があれば「〜屋」は変わる。
ましてストアフロントに出ないバイヤーであったり、極端なハナシ「総務」なんてポジションにいたら、それこそ子供には「何をしているか分からない」であろう。

それでも「サラリーマン」という大きな括りで見れば、分からないでもない。
毎朝スーツを着て「お仕事」に出掛けていくのが「サラリーマン」なら、ドコへ行ってナニをしていようと「お父さんの職業がサラリーマン」と言うことは可能だ。
これがフリーターとなると尚更分かりにくくなる。
ある日はコンビニでレジを打っていたり、ある日はトラックに乗っていたりする。
これでは、「お父さんの職業は?」なんて聞かれても答え様がないし、親だって子供に教えにくいだろう。

格差社会」なんて言われて就労意欲のない若者が増加している中で、ららぽーと豊洲にオープンするのが今日のお題の「キッザニア東京」。
ららぽーと」というとボロボロの船橋のアレを思い出し、それと「豊洲」とのミスマッチがなんとも違和感を感じるが、それはともかくキッザニア東京は「職」をテーマにしたテーマパークらしい。

30分ごとの就業疑似体験をすることで、給料にあたる通貨をもらう。
その通貨で園内のサービスを享受するというもので、入園時に支給される通貨だけでは受けられないサービスも受けられるようになるという。
つまりは、「働いて、貯金して、マイホーム買って」の団塊世代の皆様が洗脳された勤労教育を、ここで植え付けようというコトらしい。
そのこと自体は素晴らしいコトなのだろうけど、実際の社会でのこの行為には多大な忍耐力が必要となる。
更に労働分配率の低さに気付けば、「とてもぢゃないが、やってられない」というのが否定できないだろう。

実際この施設でも、入場時に支給される通貨が「50」、それに対して30分の疑似労働で支払われる貨は「8」。入ってもしばらくの間は働きつづけなければ、園内のサービスを享受できないことになる。
それに、入園時に支給されるデポジットが多ければ、それだけ疑似労働に割く時間も減らせるわけで、コレって「親の資産次第で生活と就労が大きく変わる」というそのものではないだろうか。

ワーキングプア」なんてコトバが現れたが、容易に就業できる職種では労働分配率が低く、働いても働いても楽になんかならない。
そんな親を見ての労働意欲の低下には、こんな労働疑似体験よりも人生ゲーム・M&Aの方が有効なのではないだろうか。
とはいえ、ゲーム開始と同時に「資産家」になれると勘違いのニートもいる。
問題の本質は「どう働くか」ではなく「得たカネの使い方」にあると思うのだが、分かるヒトは少ないだろうなぁ。