明暗

久し振りに鴨川へ行った。
とはいえ、有名な京都の鴨川ではなく、安房鴨川。
千葉県だ。

鴨川市館山市は、団塊世代の大量定年退職後のセカンドライフプランとして、共に「いなかぐらし」を提唱して競合している。
というか、房総でのいなかぐらしなら鴨川、という空気が定着しつつあり、館山市陣営が焦っているというのが本音だろうか。
鴨川がライバル視するのは伊豆半島、かもしれない。

海岸線を走る国道沿いに北上すると、南房総市から続く花畑に、切り立った崖から望む太平洋。
そして南側の市境のトンネルを抜ければ、ソコソコ背の高い建物に大型店とアミューズメント施設。
おそらく、いなかぐらしを予定している熟年夫婦は、週末の休みを利用して一路車で房総を目指す。
部分開通した館山道を経由して先に見るのが館山。
ソコから国道を使って鴨川へと向かえば、ダンナはともかく奥さんが気に入るのは鴨川ではないだろうか。

「いなかぐらし」と言って、男性が思い描くのが電気も水道もない無人島のような生活であるのに対し、女性が想像するのが「ソコソコの自然と
文化的な生活」。
本気で離島に移住したら、嫁が付いて来なかったというのも珍しいハナシではないだろう。

館山は景観条例により高層建築が制限されている。
それは鴨川も同じコト。
しかしながら鴨川には、その規制区域の境界ギリギリに建った高層マンションが目立つ。
名目はリゾートマンションとはいえ、市街地に隣接した住まいは快適だ。
手を伸ばせばスグに届く自然と、都会並みのマンション住まい。
月に何度かは東京へ。
それが、団塊マダムが夢想する「いなかぐらし」ではないだろうか。

「ただ自然があれば良い」とニーズを誤認したいなかぐらし誘致が、支持を得る時代は来ない。
今一つピンと来ない館山駅前を思いながら、実は「歳を取ってこそ都心に住むべき」という意見に、少なからず賛同している自分がいる。
夕張など、論外。