泥沼の転機

2月8日8時0分配信 産経新聞【カイロ=村上大介
AP通信によると、イラク駐留米軍報道官は7日、深刻な宗派対立による流血が続くイラクの首都バグダッドでの武装勢力に対する大規模掃討作戦を開始したと言明した。同通信は、最終的に投入されるイラク治安部隊と米軍の規模が8万5000人にのぼるとしており、米軍増派に国内で反対が強まっているブッシュ米政権にとっても威信をかけた作戦となる。

バグダッドでは、イスラムスンニ派武装勢力シーア派民兵組織が、テロと一般住民の誘拐殺害などを繰り広げ、米軍は2003年春のイラク戦争後、最大規模の首都掃討作戦を実施する方針を示していた。
 今回の作戦では、シーア派のマリキ首相がためらっていた同派の民兵組織の掃討が作戦の成否を分けることになり、シーア派側の中心にいる反米強硬派サドル師派の民兵組織マフディー軍をどこまで弱体化できるかが大きな焦点となっている。

ってコトなんだけれど、今回介入の大義名分となった「深刻な宗派対立」とは果たしてイスラム今日スンニ派シーア派の対立のコトを言っているのであろうか。
それよりも深刻な対立をしているのは、治安維持活動と言いながらも日々戦死者を出し続けている米軍とイスラム教強硬派。
それを「宗派対立」と言うのであれば、「イスラム教とキリスト教」と言った方が正確なのではないだろうか。

彼らが9万人もの自国の若者を投入してまで武力制圧したい本当の理由とは、今年の初めに3000人を超えたイラクでの戦死者であり、「戦闘は終結した」と言い放った今でも日々増えつづけているその数の方。
いや数そのものよりも、その数により高まりつつある「イラク戦は誤りだった」「介入に失敗した」という見解により下がり続ける支持率。
中東で黄色い異教徒が殺し合いをしているコトなど、原油の価格統制に影響を及ぼさなければどうでもいいハナシなのである。

そんな中で伝わって来たコチラのニュース

2月8日8時7分配信 ロイター[バグダッド 7日 ロイター] 
イラク駐留米軍は7日、海兵隊の輸送ヘリコプターがバグダッド近郊で墜落し、乗員ら7人全員が死亡したと発表した。イラクでの米軍ヘリ墜落は3週間足らずで5回目で、今回の犠牲者を含めると、米軍兵士ら28人が死亡している。へリが墜落したイラクのアンバル州には、イスラムスンニ派武装勢力の拠点があるとされている。
 米軍は墜落原因を調査中としているが、ヘリが地上から銃撃を受けたとの目撃情報があるほか、アルカイダ関連の武装勢力がヘリを撃墜したとの声明を出している。
ベトナム以後地上戦の支援にヘリコプターを活用することが有益とされてきた。
ヘリコプターに狙われたら歩兵は絶体絶命であり、後に重武装された対戦車ヘリは、もともと上からの攻撃を想定していない戦車にとって天敵となった。
地上戦における大きな転換点だ。

そのヘリが、イラクでよく落ちる。
「落ちる」と言うよりも、「落とされる」と言った方が正確だろうか。
「ヘリから狙われて逃げ場のない地上歩兵は、逃げ惑うことなく応戦しろ」とは、柘植久慶氏がその著述の中で20年も前から唱えていることだ。
例え自動小銃程度であっても、命中すれば飛行中の航空機にとってはかなりの脅威となり、攻撃する意欲を喪失させる効果はあるという。
赤外線追尾式の小型地対空ミサイルなら尚更だ。

つまりは想定外の上空からの攻撃に驚き、逃げ惑う地上歩兵を一方的に制圧する時代が終わり、「ヘリコプター」という存在が珍しくなくなり攻撃の対象となったとき、「ヘリコプター」の運用を見直す必要があると思うのだ。
それは敵対的な勢力の上空を飛行する場合は尚更であろうし、だいたい「護身用の拳銃」どころか「地対空ミサイル」を所持していて身柄を拘束されない、銃器を押収されない地域の「治安維持」など出来るハズがないのだ。
そういう意味でイラク戦はちっとも終結なんかしておらず、戦闘が一部沈静化しているに過ぎない。

ヘリコプターの運用ですら、現実に即した臨機応変な対応ができない米軍。
ついには友軍である英軍を誤射したモニター画像まで流出した。
イラクでの自身が置かれた立場とか、国際情勢を勘案した柔軟な対応とか、「誤り」を素直に認める姿勢なんてのが、できるハズもない。
ただこのままでは自慢の兵器産業すら、「前時代的」とされかねない現実を分かっているのだろうか。

映画「地獄の黙示録」に印象的な場面がある。
ヘリコプターの機関銃手が、上空から見える住民に機関銃を乱射しながら言う。
逃げるやつはベトコンだ。
逃げないやつは、
勇気のあるベトコンだ。