一期一会

やたらと交遊関係の広い後輩がいる。
18で上京してから30の声を聞くまで、文字通り「職を転々と」していて、その転々とした先々で知り合ったというか、一緒に働いた仲間と、その後も連絡を取り合っているのだという。

性別を問わず、転々としたそれぞれの職場に誰か一人は、そういう存在が居るというのだから驚く。
特に「職を転々と」した訳でもなく、そんな数少ない職場の同僚とも、今となっては特段付き合いのないワタシからすれば、それは羨ましくもあり、また煩わしくないのかと思ったりもする。

勤務先を辞めるということは、即ち会社そのもの、経営者、また将来性など全てに見切りを付けたということであり、その見切った会社に今だ残る同僚と、道で行き合って当たり障りのない社交辞令は交わせても、それ以上の付き合いにはならない。
それがワタシの「会社観」であり、「仕事観」「同僚観」であるからそうなるのだろうが、そこまで「会社」というものには向き合わず、客と揉めた同僚と揉めた上司と揉めた、労働条件が悪い通勤距離が遠い就労時間が長いと、まあ言ってみれば些細なことで転職してしまう、また転職してきた後輩からすれば、(辞めた会社の人間と付き合うことは、)そんなに特別なことでも、奇異なことでもないらしい。

で、そんな、言ってしまえば「腐れ縁」とも言えなくもない交遊関係を、やたらと幅広く持つ後輩に、その幅広い交遊関係について聞いてみた。
曰く「こんなに大勢の人が居るというのに、知り合う人は少ないじゃないですか。だから、知り合った人とは、その出会いを大切にしたいんです。」

何をカッコ付けて、どうせどっかのマンガの受け売りなんだろう?
と茶化したくもなるが、それでも意外に深いことを言っている。
その味は後から噛み締めるほどに味わい深く、いろいろ考えさせられる。
深い。

一期一会かあ。