水と安全は・・・

むかし「(日本では)水と安全はタダ」なんてよく言われた。
水道水も飲用に適さない硬水がほとんどで、飲料水はミネラルウオーターを買うのが「当たり前」のヨーロッパと対比して、飲用可能な水道水が上水道から潤沢に供給される日本を指しての事。
それも、先の「ナントカ還元水」問題では、現職の農林水産大臣である松岡利勝氏が釈明会見で、「今、水道水を飲んでいる人の方がすくないのでは」と言い出すくらいに、(水道水は)「塩素臭い」「不味い」と言われ、日本でも「飲料水はミネラルウオーター」が定着しつつある。
また何かと物騒な世の中になったので、「安全もタダ」というよりは「自分の身は自分で守る」という意識が定着しつつあるのではないだろうか。

むかし「日本は世界で最も社会主義的な国家である」ともよく言われた。
公の提供するサービスに「採算」とか「効率」などが求められなかったので、過疎地までくまなく道路が整備され、弱者保護の名の下「手厚い生活保護」(これは加入暦によっては年金を受給するよりも高額になる場合があり、ごく最近問題となっているが)とか「オイシイ母子手当」(子供が
いるなら、むしろ離婚した方が生活が楽になる?)など、まさに至れり尽くせりの状況ではあった。

これらの「採算」が最近になるまで問題視されなかったのは、田中角栄の時代の「所得倍増計画」などに代表される、国を挙げての極度のインフレ政策と、足りない部分をとりあえず補える各種国債の発行によるものが大きい。
最近でこそ「消費税」という税金が買い物の度に出現して、国民の納税意識も多少は上がっていると思われるが、「給与天引きされる源泉徴収制」と「将来の税収で補填する赤字国債の濫発」によって、「国(公)の運営は税収によって成り立っている」という意識は極端に低いのが日本人ではないだろうか。
それに、戦後のリベラル教育が「権利」主張を強く叩き込まれるが、対して「義務」である納税についてはほとんどスルーという状況が拍車をかける。
地面を掘ると出てくる油が高値で売れるアラブあたりには、税金がほとんど免除の国もあるらしいが、そもそもの「仕組み」が分かっていないのでは仕方ない。

つい先日は給食費の未納が騒がれ、今回は保育費の未納が騒がれている。
そもそもこの種の負担
金を支払わない背景にあるのは、「提供されて当たり前」という意識。
これをいくらモラルに訴えたトコロで、「仕組み」の分かっていない者にモラルは通用しない。
だから何度も言うが、「提供しておいてお金下さい」の後日徴収方式ではもう無理なのだ。
料金先払い方式であれば、「期待されたサービスが満足に提供されなかったので、カネ返せ」という輩も中には居るには居るが、払う気のない大半はスゴスゴ帰って行く。
今さら保育しといてカネもらえないと騒ぐのは、愚の骨頂以外の何ものでもないではないか。

そういう貨幣経済の基本を国が分かっていないのだから、そんな国が提供する教育で貨幣経済の基本が教えられなくても当たり前。
だから一見の冷やかしなのに、店舗などで尊大な態度を取るジャリが、後を絶たないのである。
「アレはそういう態度を取れるくらいに店舗に貢献している人だから出来る事」
水も安全も、そもそもタダではなかったというハナシなのである。