踏み倒せ

著作権にうるさいディズニーキャラクターに、良く似た着ぐるみが闊歩していると話題になった中国の国営遊園地は、当事者であるディズニーが中国当局に通報し、また遊園地側も酷似したキャラクターを自主的に撤去したことにより、ひとまず収束を迎えそうである。
著作権」という権利に対する意識が低いというのもあるだろうが、クマやネズミの絵が入るだけで、値段が2倍3倍になるビジネスモデルというものも、いかがなものだろうか。

たとえ紛い物であったとしても、常識的な価格のトートバックやリュックサックが並んでいれば、手を出したくなるのが人情というもの。
黒烏龍茶」の類似商品をサントリーが提訴した、なんてハナシを聞けば、『海賊版は中国の国民性』なんて一括りに出来るハナシでもないだろう。
中国は日本の真似をしているだけなのだ。

そんな中で「国ぐるみ」の特許権侵害を可能にしてしまうのが、『強制特許実施権』だ。
2001年のWTOドーハ・ラウンドで緊急性の高いエイズ治療薬などに、特許所有者の許可を得ずに特許を使用し、製品を製造・輸入できる権利が確認された。
現在インドなど8ヵ国で権利が発動され、アフリカ各国で発動の準備がされているらしい。

国内のエイズ患者に治療薬を提供しているタイ政府は、アメリカの製薬会社と価格交渉を続けて来たが、今回『強制特許実施権』の発動に踏み切り、製薬会社が大騒ぎをしている。
それもそのはず今回の発動で薬価は半減。
一人当たり月3000バーツ(約一万円)削減で患者が60万人というコトは、毎月60億円からの利益がタイ政府一国からもたらされていたのである。
新薬開発による既得権益にしたって、「儲け過ぎ」だろう。

日本でも上がり続ける医療費の抑制の為、特許権の切れたジェネリック医薬品がしきりにプッシュされ、新薬開発への環境は厳しさを増している。
そんな製薬会社の研究開発なしには、人類最大の脅威であったHIVウイルスに、人類が屈していたかも知れない。

製薬会社は生命の神秘を探求するものであって、限り無く利益を追求するものであってはならない。
なんて綺麗ごとを言う気は無いが、「やり過ぎ」はよくない。
ほどほどが頃合と考えよう、というコトなのだろう。