八王子

ハンカチ王子」として昨年の甲子園を席巻し、当然のようにプロ行きを期待されながら、あっさり早稲田大学に進学してしまった斎藤選手。
「プロ」として大成するかどうかも確定的ではなく、大成したとしても現役で活躍できるのはせいぜい15年。
引退後もコーチや監督、スポーツキャスターとして生計を立てられる選手は稀で、ほとんどの選手はサラリーマンとしての第二の人生を模索している。
そんな現実を考慮すれば、「大卒」という肩書きをプラスして、しかもプロに転向するかしないかの判断を最大4年後まで先送りした彼の行き方は、「かなり打算的」とも見ることができる。
対してプロ入りを表明し、大人の事情でつくられたドラフト会議により、本人の希望に関係なく球界随一の弱小球団楽天イーグルスに入団してしまった田中投手と比べれば尚更だ。

当の斎藤投手はというと、「ハンカチ」のイメージを払拭すべくそのハンカチは祖父母にプレゼントし、6大学野球では1年生として入学早々からマウンドに上がり、「神宮球場の空席をなくする」の口約通り、優勝を決する早慶戦ではプロ野球を加えても歴代2位となる観客動員を記録した。
ひねくれ者のワタシとしては、入学からこれだけ野球漬けの毎日でナニを勉強してんだか、これで「早大卒」ってんだから世間の早大卒も安くなったもんだ、と皮肉のひとつも言ってみたくなる。
とはいえあの神宮球場を満員にして、風前の灯火だった大学野球にスポットライトを当てたというだけでも、彼の功績は只ならないものがあるだろう。

青田買いが横行して有名選手の大学進学を許さず、大学野球を廃れさせたのは他ならぬプロ野球界だ。
大学への推薦入学が決まっていた桑田投手をプロ入りさせ、以後「PLから大学への推薦入学はなくなった」ということで、PL学園への入学希望者すら減らしてしまった、そんな横暴ぶりが嫌気されたということなのだろうが、「魅せてナンボ」の「プロ」が、一介のアマチュア選手一人に負けてしまう現状というものを、どう考えているのだろうか。

また、そのネーミングが合っているのかどうか定かではないが、高校生にしてゴルフツアーで優勝してしまった「ハニカミ王子」こと石川遼選手の出場している関東アマチュア選手権が、平日開催にも関わらずとてつもないギャラリーを集めて大盛り上がりしている。
藍ださくらだと盛り上がっている女子ゴルフ界に比べて、片山選手意向人気低迷にあえぐ男子プロゴルフ界からすれば、「救世主」のような存在なのだろうが、「なぜ客が入らないか」について主催者は考える必要があるだろう。
その大盛況に呼応して、にわかファンによる傍若無人ぶりを問題視する声も上がっているが、「ルールが分かりにくい」「暗黙のルールが多すぎる」「閉鎖的だ」というのはゴルフ全般について言えることだし、そもそもその苦言を呈している自称ゴルフファンのオッサン達ですら、はたして自分達のゴルフマナーはどうかと言えば、胸を張って言える人はどれくらい居るというのであろうか。
「暴言を吐く」「つばを吐く」「グリーン上で喫煙する」「タバコを投げ捨てる」「ラウンド途中で試合放棄する」
そんな傍若無人なスター選手を、その人気だけで重用してきた協会の責任は重い。

いずれの場合にも言える共通のことというのが、スポンサーの方だけを向いて観客、ファンをないがしろにしてきたその運営姿勢にある。
ハンカチが18歳、ハニカミは15歳というのに、それでも「観る」側のことを終始気にかけたコメントを発する二人の王子を見ていて、そんなコトを思った。
ちなみに表題は、「○○王子」というキャッチーなネーミングを問われて、デーブ・スペクター氏が出した答え。
こういうセンス、ちょっと好きだ。

名将野村監督の指導によって実力を付け、「プロ」として通用しつつある田中投手の判断の明暗はともかく、今後の活躍を期待したい。