ワタミの介護

話題の2ショットコムスン」の文字が世間を騒がせている最中、「ワタミの介護」という新聞広告がやけに目立って見えた。
と、コムスンの事業譲渡先として名乗りを上げているとの報に、「やはり」と思った。

ワタミの社長がスゴイらしい」
そんなハナシを聞いたのはほんの数年前。
株主総会では自ら司会を務め、株主からの提案にその場で「採用します」、「採用しません、何故なら・・・」と即答する姿勢で人気を集めている、と。

禁煙居酒屋など様々な飲食店を展開した後、経営の行き詰まった学校法人を買収。
「今の教育には一言ある」として陣頭指揮にあたり、登校時校門での挨拶を励行しているという。
と、程なく教育再生会議の委員に選出され、ガタガタ騒いでいたと思ったら、こんどはコムスンの受け皿として、有料老人ホーム事業を継承したいと言う。

昨今「悪の権化」として釈明に追われるグッドウイルグループの折口雅博会長兼最高経営責任者(CEO・「CEO」というのも、もう陳腐になってきたが)にしたって、派遣労働を広義に解釈した安易なフリーターの増殖に貢献し、その「搾取するモデル」が殊更にチヤホヤされて経団連理事(まあ、「経団連」という団体自体の存在意義が希薄になりつつあるのだが)にまで登りつめた、「ちょっと前まで時の人」であったことに間違いはなく、そんな人気者にはことごこくコンタクトを取る安倍シンゾーとの2ショット写真は、「ネットで話題になっ
ている」らしい。

「介護」というものの家族の負担を軽減すべく創設された介護保険制度は、その意義こそ崇高なものであったが、制度運営の為に量産されたケアマネージャーと、ケアマネージャー自身とは利害の関係がない要介護認定。
それに、等級によって若干の違いはあるものの、在宅介護においてその自己負担は実に1割というオトクな制度は、制度の濫用と過剰請求の温床となり、制度の崩壊はついには介護が必要な状況でも介護認定のされにくいという、まさに本末転倒の事態となった。
トコロで介護保険報酬の過大請求については、今回のコムスンがオリジナルのように言われているが、そんな手法は2年も前から新聞を賑わす陳腐な手法。
通常過大請求発覚と同時にトンズラする事業者が多い中で、「行政処分が下る前に事業所廃止届けを出す」という部分のみがコムスンのオリジナルであって、「あくどい」とされる部分であろう。

では訪問介護事業は旨みの無い事業なのであろうか。
現場にはヘルパーさんの不足から劣悪な労働環境があるという。
悪条件から離職率が高く、それが人手不足の負の連鎖を加速させる。
しかしその問題は、単に「労働分配率」にあるとは言えないだろうか。
つまり、この事業で社長がポマードを塗ったアタマに高級なセビロを着て、経団連なんて活動に参加できるほどの収益性はないというだけのハナシではないだろうか。
(もっともグッドウイルグループの売上の大半はハケン、次いで介護であとはチョボチョボらしいが。)

結局何が言いたいって、「ワタミ」「ワタミ」と有り難がるんぢゃねぇ、ってコト。
急成長した社長というものは、ひとたび落ち目が出れば、幾らでも叩くほどにホコリが舞う。
そういうもんぢゃないか、という話なのだ。
それが証拠に、「お客様のクレーム対応に社命を賭けています」と豪語するワタミの、飲食店舗ってハナシほどにもなく「たいしたコトない」ぢゃないか。
そんなことを、ポマードっ気の無いアタマでテレビ出演の折口氏を見ていて思った。
これも、「平身低頭謝罪に奔放している」演出なのだろうか。