負けシェフの晩餐

どっちの料理ショーという番組で、贅の限りを尽くした食材を用いるも、惜しくも試食に選ばれなかったチームのシェフが、自ら手塩に掛けた自慢の料理をひとり試食するコーナーがあった。
そしてお約束のこの台詞
「こんなに美味しいのになぁ。なんでみんな選ばないんだろうなぁ」
その悔しさというか、業界に名だたる有名シェフが、こんなに美味しい料理を食べてもらえない不幸をボソボソとぼやくその姿が面白くて、毎回楽しみにしていた。

「目白」という街がある。
JR山手線目白駅を降り立つと、学習院、ポン女と名の知れた大学が並ぶ。
それに合わせて町並みもなんだか山の手風情たっぷりなのだが、よく見るとシャッターを閉ざした店舗が多いのが目に付く。
平日日中の歩行者通行量もソコソコあるというのに、だ。

【流通】商店街:70%が衰退、空き店舗対策など課題に…後継者難所有者に貸す意思がない
というスレッドが2ちゃんねるに立った。
魚拓:http://www.h6.dion.ne.jp/~w-rock/tenpo.htm
所有者に貸す意思がないというフレーズが気になってその書き込みをチェックしたのだが、書き込みの大半はまあお約束の商店街批判。
それはそれでもっともなコトでもあり、また商店経営とは無関係の人間の戯言でもある。
ただ中には、

42 :名刺は切らしておりまして:2007/08/10(金) 00:59:51 ID:+OE5wcga
>>所有者に貸す意思がない

地方の商店街の衰退は強欲家主も要因のひとつだからな。

アイツラいまだに居抜料2、300万円敷金100万円家賃5、60万円連帯保証人複数要求という殿様商売丸出しの感覚だし。
日本で最もあさましいのはこういった強欲不労所得者。

自分らの社会的な役割なんて微塵も意識してない。

みたいな期待通りの書き込みもある。
店舗兼住居をどうやって貸すんだ、なんて指摘もあるのだが、貸す気があれば若干のリフォームを施して生活導線を切り離せばいいだけのハナシ。
そういう設備投資すらなしに「貸せない」と言うのは、要は気持ちの問題だろう。
改装資金にしたって、成約時敷金に礼金と一時金が入ってくるのであるから、「銀行から借り入れできない」は理由にならない。

最近思っていたのは、東京近郊と地方都市での、店舗用賃貸物件の坪単価のこと。
周辺人口、平日日中の全面道路の歩行者通行量(自動車通過量ではない)、ドレを取っても雲泥の差があるというのに、賃料だけは格差がほとんどないのだ。
居住用物件が間取り、駅からの距離、環境、コンビニなどで細かく価格設定されているというのに、だ。
もちろん、需給バランスというのはある。
これから新規に店舗を構えようというヒトは、コツコツ貯めた貯金に借入金と資金を潤沢に用意しているので、まぁ最初だからと大枚はたいて賃借するから、それでいいだろうというのもある。
ただ、高すぎる賃料設定はすなわち店舗の継続運営を妨げる。
これでは、起業家を潰すだけでシャッター街道の現状は変わらない。
だからこそ、空き店舗対策に税金を投入するのであれば、それ以前に「その物件、ヒト(他人)に貸すなら月いくら?」のレベルを是正する必要があると思うのだ。

人通りがあるのにシャッターを閉ざした店の並ぶ目白の街並みを見ていて、思わず負けシェフになっている自分がいた。
こんなに人通りあるのにな・・・
なんてもったいない・・・