悪魔との契約

dubrock2007-10-12


もうオナカイッパイというカンジで、ボクシングの亀田ネタはことごとくスルーしてきたのだが、試合前のインタビューでチャンピオン・内藤選手の、

プロでなければ(亀田とは試合は)やらない。
自分はお客さんからお金を取って試合をするプロだから、お客さんが望む試合をする。
という発言で、ついつい乗せられてしてしまった。
出先からの戻りが遅くなって、家路を急ぐバスの車窓から見える信号待ちの隣りの車が、ことごとく亀田戦をワンセグ視聴していたのを思えば、ワタシみたいなのは少なくなかったハズだ。
結局、ようやく辿り着いた我が家でテレビを点ければ内藤選手がインタビューを受けていて、最初に結果だけ知ってしまうという一番がっかりな観戦となってしまったが、どうせ見逃すからと嫁に言われて予約しておいた録画再生により、注目の一戦を観戦することになった。
(結果的には、やたらと長い煽りVTRとCMをことごとく早送り出来たので、余計なストレスを感じずに観戦できたのであるが。)

試合直前までのビックマウスとパフォーマンスからは想像もつかないような、ガチガチにガードを固めて前に出る亀田次男のファイティングスタイル。
「これが大毅だ」なんて実況されると思わず苦笑してしまうが、ともかく前半は見ていて面白いと感じるものだった。
それに、何と言っても特筆すべきが「オープン・スコアリング・システム 」と呼ばれる、4Rごとに採点を公表する試合運営システム。
「12ラウンド総合して・・・」とか「手数より有効打では・・・」とか「プロの目から見れば・・・」とか有耶無耶なコトを言って、「なんだかんだで亀田の勝ち」とした判定結果が過去に騒がれた亀田戦だからこそ、こういう措置を講じるのが主催団体の誠意であり、このことによりボクシングに対する世間の評価も保たれたのではないだろうか。

いずれにしても、実況席の皆さんの発言とは裏腹に、チャンピオン優位のまま進行する試合展開。
途中度重なる頭突き攻撃に内藤選手のまぶたが切れるが、「ここで試合中止なら亀田のTKOですよ」と叫ぶ実況アナの声虚しく、試合は止まるコトなく最終ラウンドまで続いた。
内藤選手が亀田次男の頭を抑えるようなシーンも目に付いたが、もともと弱いと言われている内藤選手のまぶたを亀陣営が狙って、意図的にバッティングしているのではとも取れなくもない。
ともかく、「バッティングによる出血」なんて一番つまらない理由で試合が終わらずに、非常に良かったと思う。
しかし試合が最終12ラウンドになった途端に、途中からカメラ目線も忘れて頑張ってきた亀2の動きが急変する。
クリンチというよりはタックルに近い。
そして離れない。
警告で1ポイント減点されるも、さらに内藤選手を持ち上げて投げ飛ばす暴挙に。
もはやボクシングではない。
せっかくココまで頑張ってきたのに、と言いたくなるが、
ココで負けたら父ちゃんにシバかれるんぢゃー
という亀2の心の声が聞こえた瞬間でもあった。
こういうゴタゴタの混乱から内藤選手の集中力が切れた隙をついて、ラッキーパンチでKO、ぐらいしか、亀陣営に残された作戦はなかったのかもしれない。
ともかく、本当は見せ場のハズなのに、なんだかグズグズのまま最終ラウンドも終了。
当然、内藤大助選手の判定勝ちと相成ったワケだ。

思えば、やんちゃな悪ガキ3人を抱えた亀父が、「ワイの息子3兄弟はボクシングで世界取るんぢゃー」とTBSと独占密着取材契約を結んだ時に、悲劇は始まっていたのかもしれない。
メディアの力で注目され、ビッグマウスなパフォーマンスで人気を博したが、いかんせん肝心の実力が伴わない。
トコロが、ずっと密着してきたTBSが許してくれない、保護者である父ちゃんが許してくれない。
中学にもほとんど不登校と言われた三男はついに海外に飛ばされる始末。
「世の中」というものを知らずに、ただただ保護者である父親に盲従する兄弟を見ていて、少しかわいそうにも思えた。
(まあ彼らだって、ボクシングをしていなければ今の様な生活はなかったであろうから、それが「可哀相」なのかどうかは微妙ではあるが。)

結果的に話題を集め、視聴率で笑ったのはTBSかもしれないが、ともかく、明らかに亀2用に用意されていた「金色のグローブのトロフィー」を手にし、明らかに亀2のカラオケ用に用意されていた紙テープの吹雪の中で祝福された内藤選手に、「おめでとう」と言いたい。