ミニ四駆

dubrock2007-11-04


小1の甥は、車が好きだ。
ガキの頃の記憶で言わせて貰えば、そういう場合2頭身にデフォルメされたいわゆる「車のおもちゃ」ではなく、ともかく実車を忠実に再現したものを所望するのだが、なかなか理解して貰えない傾向にある。

「組み立てられるプラモデルで、細部までリアルで、モーターで走るヤツ」

「そんなの昔作ったぜ、その辺のプラモ屋に売ってるだろ」、なんて知ったフリをしたら、探してみたが見つからなかったから一緒に買いに行ってくれ、というハナシになってしまった。
ならば、とガキの頃よく通った館山六軒町本通り吉田印舗を訪れた。
ハンコ屋なのにプラモを売っている、というのがミソである。
入った途端に鼻を付くプラカラーのシンナーの匂い。
ガラスケースの中には、精巧に作られたディスプレイモデルの数々。
果たして、20年前の記憶そのままに、吉田印舗はソコにあった。

冷やかしになりそうな雰囲気なので、オヤジにまず挨拶をして店内に入る。
ガキの頃は気が小さくて、挨拶もろくに出来ずに店のオヤジを避けるようにプラモ棚の前へと向かっていたが、改めて見る「ハンコ屋のオヤジ」は背も低くて、とても腰の低い人だった。

むかし「車のプラモ」と言えば定番だった、「マブチモーターで走るシリーズ」は成りを潜め、精巧に再現するディスプレイモデルが大半を占める。
最近の子供はプラモデルなど作らないので、もっぱら「大人向け」の走らないシリーズがメインだという。
なんでもPTAが、コドモにカッターやニッパーを持たせるコトを嫌がるらしく、指を切りながらプラモデルを作ったのは「ガンダム世代」が最後なんだそうだ。

残念がる甥を気遣って、それでも売れ残った「走るシリーズ」を探してくれるオヤジさん。
でも出てくるのは、昔のパジェロフォルクスワーゲンなど、おおよそ「作りたい」とは思いそうもないもの。
つまり「売れ残る」とはそういうコトなのだろう。

と、手頃な価格で在庫の山に埋もれていた「ミニ四駆」を発見する。
実車を忠実に再現した」という部分では大いに期待を裏切ってはいるが、「走らせる」という部分に秀でた逸品を、別売りのモーターとともに買い揃える次第と相成りました。

ところがこの、一昔前に一世を風靡した「ミニ四駆」なるもの、小さいながらも「四輪駆動」を実現するための歯車群や、接着剤を一切使わない設計など、改めて作ってみるとなかなか侮れない。
小さいネジなのにいちいちワッシャーを噛ましたりと、組み付けもかなり本格的なのである。

モーターに吸いつけられるネジを見て、モーターには磁石が使われているコトを知る。
このネタって、物理の大学受験問題でもよく使われるハナシだ。

ネジは、右に回すと閉まる。
これがネジでは一般的で、左に回すと閉まるネジは特別に「逆ネジ」と呼ばれる。
これも機械の世界では常識だが、こんな機会でもなければ知るコトなどないだろう。
ガソリンの給油口のフタが、どちらに回せば開くか大人でも知らない時代なのである。

ガンダム世代と言えば、30過ぎの団塊ジュニア
今の20代の若い親の世代なら、親ですらプラモなど作らなかったというのが大半。
ならば、その子がプラモなど作らなくても不思議はない。
されど、たかがプラモデルというなかれ、ソコから得られる知識というのは計り知れないモノがあるのである。

「理系離れ」を問題視するなら、文科省ミニ四駆のレースから始めてはどうだろうか。
そんな主張を唱えたくなるくらい、ミニ四駆の世界は奥の深いものだったのである。