責任者を出せ

dubrock2007-11-05


官公庁が物品調達を行う際に開かれる「入札」は、「支出負担行為担当官」という経理方のトップの名前で行なわれるのが普通だが、実際の実務は当然ながらそれら物品購入を担当する担当者が行なうことになる。
担当者は購入物品の市場価格などを調査して、調達を予定している物品の「予定価格」を作成する。
この予定価格をもとに「予算」が組まれるので、予定した価格で応札する業者が現れず入札が不調となり、予定価格で物品が調達できないと全体の予算編成にまで影響を及ぼすことになり、担当者の面目は丸つぶれとなる。
かといって予定価格を大きく下回る応札業者が現れると、「担当者はナニを調査していたんだ」となり、やはり担当者の面目は丸つぶれとなる。
「安く買えて良かった」では済まされないのだ。
つまり担当者が組んだ予定価格の95%くらいで落札してもらえるのが、担当者としても非常に都合がいいわけで、そういう役人仕事が「官製談合」に代表される、日本の談合体質の温床となっていると思われる。

以前戦争で原油価格が急騰して暖房用重油調達の入札が不落札となり、最低価格を提示したワタシの上司が「ネゴ」と呼ばれる個別の納入価格折衝の場に呼ばれたことがあった。
担当者は入札直前に、「参考見積り」と称する事前の価格調査を納入各社に行なっており、その後の原油高騰でその「参考見積り」の価格すら出す業者が居なかったことに激怒していた。
文字通り「面目丸つぶれ」なのである。
「参考見積り」の価格での納入を迫る担当者に、その後の「紛争」という重大要因を盛り込まなかったオマエが悪いと突っぱねる上司。
交渉は平行線のまま延々続いた。
苦し紛れに担当者が言った。

ハナシにならない。社長を連れて来い。

このコトバに上司が激怒。
こちらは社長から、正当な委任状を受けてココに来ているのである。
全権を委任されているのであり、すなわち社長が来ているのと同意なのである、と。
さらに続けた。

そんなコトを言うなら支出負担行為担当官連れて来い。

そう、入札参加業者は正当な委任状を得て入札に参加しているが、担当者は便宜上実務を行なっているだけで、交渉権限など何もないのである。
後日談であるが時の支出負担当為担当官は上司と同年代。
ヒラ時代から20年来の付き合いで、「知らない仲」ではなかったのである。
入札でメンツを潰された上に、ネゴでも面目丸つぶれの担当者は顔を真っ赤にして退席し、しばらく後支出負担行為担当官から別室に招かれた。
穏やかな表情で、「ウチの若いのをあまりいじめないでよ」と笑う支出負担行為担当官が、印象的だった。

自民と民主の「大連立」構想を、どちらが持ち掛けたかが問題になっている。
公明を裏切った福田なのか、日和った小沢なのか、と。
そしてまた、小沢の提示した条件を「持ち帰った」のが福田なのか、福田から持ち掛けられた「大連立構想」を持ち帰ったのが小沢なのか、と。
いずれにしても、「その場で即答せずに持ち帰った小沢」に批判が集中しているコトが面白い。
自民党からの政権奪回を合言葉にやってきたのに、連立政権の申し出を即答で断らなかったのが問題だと。
「独断」の誹りを免れる為に、わざわざ即答せず持ち帰った「壊し屋」の目論見が、見事裏目ったこの出来事。
しかしながら、党首会談とはそもそも「即答できる決定権者の会合」ではなかったのだろうか。

この場で返事できないなら来るな。

あの上司なら、そういう風に言ったのかな、とふと思った。
お互いに即答できない「似たもの同士」だった様だが。