遭難

八千穂高原あたり全国的に紅葉が色づき、秋の行楽には絶好の季節となった。
とはいえ、画に描いたような秋晴れに恵まれた先々週は朝から渋滞が発生。
「相模湖を過ぎるまでに3時間」と言われれば、出掛ける気持ちは失せようというものだ。
対して低気圧の通過と秋雨前線により生憎の天気となった先週末はこれといった渋滞情報もなく、静かな週末となった。

それなら、出掛けるしかないでしょう。

というコトで、プラっと日帰り圏での紅葉狩りを模索するコトとなるのだが、

PLAN A 東北道を北上して日光に向い、那須高原から会津を目指し、あわよくば猪苗代湖まで。
(「紅葉狩り」という意味では申し分ないコースなんだろうが、どんどん北上してしまうと帰りがつらくなるし、それで得られた「南東北地方」があまり新鮮味を覚えない、というか、そういうのは嫁の実家への帰省のついでにすればいいので却下。)
PLAN B 東北道を北上して日光を経由し、戦場ヶ原から沼田に抜け関越で戻る。
(これは悪くないコースだが、ついこの間使ったルートだし、今度日光に行くときは、是非とも東照宮周辺を散策したいと思っているので却下。)
PLAN C 関越で北上し軽井沢へ入り、ソコから諏訪へ抜けて中央道で帰る。
PLAN D 横浜横須賀道路で逗子を目指し、ソコから葉山・湘南と抜けて伊豆から箱根へ、そして東名戻り。
先日決壊した西湘バイパスの状況も見たかったし、カフェ「サドルバック」で久しぶりにコーヒーも飲みたいので、PLAN Dは捨て難かったのだが、「紅葉」を観るなら夜の冷え込みの厳しいトコロの方が良いワケで、箱根はともかく伊豆では色付きも弱かろう。
それに箱根は混雑が予想されるので、今回はお手軽なPLAN Cを採用することにした。

東京から100キロ圏の軽井沢は高速道路を利用すれば1時間ほどで到着してしまうのだが、国道18号線を進むとだんだんと近づいてくる妙義山が見たくて、わざわざ高崎で降りることにした。
今回思ったのが、高崎の市街地を抜けるのに意外と時間を取られるので、松井田妙義で降りて碓氷峠のみを愉しむのがベターではないかというコト。
平坦な関東平野から山岳地帯への入り口として、碓氷バイパスだけは一般国道を。
それが「軽井沢」を目指す儀式ではないだろうか。

ともかく、せっかくの軽井沢も今回は通過点に過ぎないので、その先の小諸から佐久方面へ国道141号線を南下して諏訪を目指すコトとする。
この、「佐久」あたりの景色がなんとも綺麗で、気を良くした珍道中は国道299号線通称「メルヘン街道」に反れて天狗岳を目指すコトとなる。
ちなみに「天狗岳」はかの名峰八ヶ岳の北側に位置する標高2646Mの「山」であり、登山愛好者であれば常識である「山をナメるな」という言葉の重みをこの後知るコトとなるのだが、「国道が通っているくらいだから大丈夫だべ」くらいの安易な気持ちで、ガンガンと峠を目指した次第なのである。

突然のシャーベット路紅葉の木々は次第に落葉し、標高1500Mを超えたあたりから「シラカバ(白樺)」が目立つようになる。
その白樺の林がこれまた見事で、八千穂スキー場を通過、「ふるさとの森」入口のロッジで缶コーヒーなど買ってさらに先を目指すのだが、ココで屋根に雪を載せた車とすれ違う。
だいたい、スキー場を越えて山の奥深く分け入った時点で気付くべきだったのだが、「山」を甘く見てしまった。
さらに進むと路肩に解け残った雪。
久しぶりの雪に「雪だ雪だ」とはしゃいで上ると、路面はシャーベットに。
まあこの辺が最高点だろうから(この時標高は2200Mを超えていたと思う。)、あとは下れば大丈夫さ、なんてさらに進むめば立ち往生して乗り捨てられた国産の高級スポーツカー。
「雪道には慣れている」なんて調子に乗っている場合ではもはやなくなった。

先日、ジーパンにスニーカーで富士山頂を目指し、9合目で遭難、救助されたバカヤロウが居たが、こんなトコロで路肩にスタックしてはその二の舞になり兼ねない。
だいいちガソリンも心もとない量しか残っていないし、こんなトコロからレッカーされたらいくら請求されるか分かったもんでもない。
さすがに生命の危険を感じ、少し広くなったトコロでUターン。
先ほどのロッジまで戻り県道を141号線方面へ下り、清里から韮崎へ降りた頃には日もどっぷりと暮れていた。

ちなみに帰路の中央道は八王子に本線料金所がある特殊構造。
わざわざ料金所グルンバイなどの小技を使わなくとも、夕方5時〜8時までの料金所通過なら通勤割引、8時〜10時までは休日渋滞ポイントにおける時間帯割引、いずれにしても半額のおトク料金で帰って来れる。(それがこのルートの利点でもある)
2時間とかからずに都会の喧騒に舞い戻り、さっきまでの「生命の危険」がウソのようであったが、高崎、軽井沢、佐久と晴れ間が見える好天に恵まれ、高崎では「虹」まで目にするコトができた。
その「好天」から一変しての雪景色。
あれはきっと、天狗様の仕業にちがいない。
そんな思い出となった、今年の紅葉狩りであった。