疎い

日本には「車検制度」というものがあって、一般の人が使う乗用車はたいてい2年ごとの「車検」が義務付けられている。
昔車検と言えば2年に1度の集中整備であって、「向こう2年間に予見できるトラブルは未然に防ぐ」という名目のもと、ありとあらゆる消耗品が交換され、費用の請求も20万円超というのがザラだった。
この20万円の中には2年分の重量税や自賠責保険など、いわゆる「法定費用」として不可避なものも含まれていたが、多少磨耗したブレーキパットや、ややくたびれた感の出たファンベルトなど、まだ交換まではする必要のないものも多分に含まれていたというのが現実である。
つまり「向こう2年のトラブル予見」は、やや「やりすぎ」の感が否めなかった。
どだい、年に1万キロも走らない車に、それほど必要なメンテナンスなどあるワケがないのである。
ともかく、黙っていても車検が来れば20万、30万と大枚が飛ぶ話になるので、これを契機に代替を、というきっかけになっていたことは確かである。

こんなオイシイ市場にも規制緩和の波はやってきて、ユーザー自らが車検を通す「ユーザー車検」というものが認められるコトとなった。
この制度改革のポイントは「ユーザー自らで通検できる」というコトよりも、「自らが運行する車両の整備はユーザーの自己責任で」というコトなのだが、そんな義務のハナシはすっ飛んで「自分で通せば車検は安い」というコトだけが世間に広まった。
実際、新車から3年後の1回目の車検であれば、「ほとんどがそのままでも通検できる」というものだったのだから、これに世間のヒトが飛びつかないワケがない。
そしてその制度を逆手に取った、「ユーザー車検代行」というビジネスが生まれるコトとなった。
ユーザーが行なう通検手続きを、代わりに業者が行なってしまおうというコトだ。
これには、ガソリン以外のカー用品が売れなくなって困っていたガソリンスタンドが飛びついた。
なにせ「車検」と言えばオイル交換くらいは受注できそうだし、自賠責保険の取り扱いだけでもないよりはマシだ。
そんなワケで、車検満了の近い顧客に「お声がけ」をするよう、アルバイトのオニイチャンに特命が下ったのである。
どうやって「車検満了」を知るかというと、「車検ステッカー」という車検の満了年月が書かれたものをフロントガラスの中央上部に貼ることになっているからで、それがむかしはこんなカンジだった。
むかしの車検ステッカー
つまり4年ごとに色が変わるワケで、この例で行けば今なら「水色の11か12」が「車検満了が近い車」というコトになった。
これがいつの間にかサイズも小さくなって、こんなカンジ
いまの車検ステッカー
になっていた。
車検満了年に関わらず、ぜんぶ水色。
これでは車検満了月を読み取ることもままならず、まして満了「年」を読み取るなど至難の業であって、ソレを読み取ろうとすればオーナーさんから「ナニをしているんだ」と優しく問い詰められるコト間違いナシ。
つまり客の車を勝手に物色して、当たりをつけたターゲットにだけアタックするという、なんとも効率的な告知活動は手法を変える必要性に迫られたのである。

そんなコトはほかにもあって、

高性能ノートブック・パソコン「ThinkPad」でおなじみのレノボでは、陸上短距離界のエース末續慎吾選手をスポンサーすることになりました。
なんて言われると、「ThinkPad」は「IBM」やろ、とソコから引っ掛かってしまう。
あ、末續慎吾選手てこのヒトね
末續 慎吾(すえつぐ しんご、1980年6月2日)は日本の陸上選手。熊本県熊本市出身。末續世代の中心人物。日本オリンピック委員会・選手強化キャンペーン・シンボルアスリート制度適用選手。

東海大学高野進の指導を受けて才能が開花。高野が日本人の体格に合わせて構築した走法を完成させ、世界陸上2003年パリ大会の200mで銅メダル獲得の快挙を成し遂げた。日本人でこの種目のメダル獲得は初めて。短距離走において上位入賞は黒人選手がほとんどを占める中、末續の世界陸上でのメダル獲得は驚異的な価値がある。オーストラリアのパトリック・ジョンソンとともに、現役世界最速の非ネグロイドとも言われる。
2006年のアジア大会で200m2連覇を果たした。

自己ベストは、100m:10秒03(日本歴代3位)、200m:20秒03(アジア記録)
          〜Wikipediaより

IBMが「レノボ」に社名変更したんだろうかと検索したら、
2004年12月、聯想集団(連想集団、れんそうしゅうだん、(Lianxiang Jituan)は中華人民共和国のパーソナルコンピュータメーカー。英語社名はLenovo、日本法人はレノボ・ジャパン株式会社。)はIBMからPC部門を12億5千万ドルで買収することを発表した。
という記述に行き当たった。
つまり「IBMのThinkPad」はいつの間にか「レノボThinkPad」になっていたのである。
それも3年も前に。
世の中の流れはあまりに速くて、付いていくだけでも大変なものなのだ。
(にしても疎すぎだが…)

疎いついでにレノボでは、『新しい発想で行動し挑戦するNew Thinker発掘キャンペーン』というのをやっているらしい。
我こそは「New Thinker」という方は、応募してみてはどうだろうか。