高度浄水処理水

dubrock2007-11-27


アムウェイと言えばナベが有名だが、耐用年数の長いナベは一巡してしまえば一家に2セット、3セットと売れる類のものではない。
それがいくら優れた機能と性能を持ち合わせていたとしてもだ。
なので様々な商材を模索して売上を維持しようとするのは、これはアムウェイに限ったコトではない。
そんな中で生まれた商材が「浄水器」。
浄水器そのものが数十万円の大商いとなる上に、サプライ品の継続した反復販売が可能になる利権商売となり、これは売る側にとって大きなメリットとなる。
なのでこの商材を背負っての親戚行脚となるのだが・・・

「年寄り」即ち「最新の情報に疎い」という大前提のもと、開口一番に「もう今の水道水は危なくて飲めないんだよ」と切り出す。
ソコで食いつけばコッチのもの、用意してきた販促ビデオを上映し、1台ご成約と相成るワケである。
コレを市政一筋40年の伯父の家でやった。
「市の水道が飲めないとはなんてこと言いやがるんだ」と普段温厚な伯父は烈火の如く怒り出し、当人は目出度く出入り禁止となった。
そんなハナシが漏れ伝わってきた。

市政一筋40年のこの伯父はともかくとして、「水道水はマズイ」というのは実際に不味いかどうかはともかくとして、「現代の常識」として大多数の人間に刷り込まれている。
その昔北海道から出てきたばかりの同級生が、「東京の水は飲めない」と言ってペットボトルに大量の水道水を備蓄し、カルキ抜きをしてから飲んでいたことがあった。
とはいえミネラルウオーターなどヨーロッパ人の嗜みにしか過ぎなかった時代、他に飲むものがなく夏場など「少し臭いな」と思いながらも、あまり気にせず水道水を飲んでいた。
カルキ臭が抜けるとはいえ、常温で3日も4日も放置した水の方が、よっぽど危なくね?というのが正直なトコロだった。
だいいち、いちいち汲んでおくのがめんどくさかった。
体も味覚も「若かった」のである。

銘柄も豊富に価格も2Lペットで100円程度からとお求め安くなったミネラルウオーターではあるが、まだ日常の生活飲料水として使うには抵抗がある。
トコロが蔵王山系の湧水を汲んでくるようになって以降、「水道水」というものをとんと飲用しなくなった。
同じ蔵王山系を水源とする仙台近郊の上水道ですらそれなのである。
東京の水道など風呂や洗濯に利用する生活用水ぐらいの認識になってしまって、「飲もう」「飲んでみよう」とすら思わなくなってしまった。

この、「東京の(水道)水はマズイ」というのは、水道行政に関わるヒトにとっては市政一筋40年の伯父と同じものがあるらしく、「飲める」というだけでなく、「美味い」水道水を供給しようという気運が高まっているらしい。
たしかに、各戸までのパイプライン敷設という膨大なインフラ整備をしたにも関わらず、「飲むものではない」と言われてしまっては形無しだ。
ソコで採用されたのが、「高度浄水処理水」。

通常の浄水処理(沈でん、ろ過及び消毒)では、十分に対応できないかび臭の原因となる物質やカルキ臭のもととなるアンモニア態窒素などを取り除き、トリハロメタンのもととなる物質(トリハロメタン生成能)などを減少させることができます。
というコトで、コイツをペットに詰めた「東京水」が都庁で売られており、その「東京水」は既存のミネラルウオーターに比べても「遜色ない味」なんだそうだ。

現状東京の水道水の54%が「高度浄水処理水」となっており、逆に言えば半分は既存の処理方法の水道水が混ざっているので、これで「美味くなった」かどうかの議論にはならないと思うが、2013年には100%の高度浄水処理化を目指しているという。
しかしながら、

多摩川上流部や相模川と比べると、利根川水系アンモニア態窒素なども多く、原水水質はあまり良くない
と東京都水道局のHPでも認めてしまっている通り、水源の水質段階での差というのは否定できない。
たしかに流域の下水道が整備され、「首都圏の河川もキレイになった」と言われるようになったとはいえ、隅田川や荒川の下流域で「泳ぎたい」と思うヒトも居ないだろう。
かなり上流域で取水する朝霞や小作、東村山はともかくとして、三郷や金町などは「え!こんなトコロから上水道の取水してんの!?」と思わず声を上げてしまうそうになる。
それに、何十年と前に敷設された水道管。
東京の水がにわかに「美味しくなる」とは思えず、NHKプロジェクトXで取り上げられそうな、それはそれは壮大な計画に思える「美味い東京水」計画。
「蛇口に口つけ」でゴクゴクやる、そんな日がまた来るのだろうか。