自閉症ライター

dubrock2008-01-31


世間では「ハウツー本」が流行りらしく、『なぜ、〜』とか『〜の仕事術』という本がよく売れているらしい。
そんな流行りに乗っかったワケでもないが、久し振りに買った本は吉田典史著『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)。
コテコテのハウツー本だ。

ドケチで古本しか買わない主義ではあるが、この本は新聞広告を見て「欲しい」、いや「是非とも読みたい」と久し振りに思った一冊。
そして「古本屋に並ぶまで待てない」というよりは、「古本屋に流通するほど売れるとは思えない」という思いで、書店に26日から並んだものをいち早く手に取った次第だ。

「古本屋に並ぶほど売れるとは思えない」というのは著者の吉田さんに失礼な言い方かもしれないが、この本の潜在的読者層というのは「売れないライター」若しくは「ライター志望」また「ライター崩れ」といったトコロで、いずれにしても万人受けする内容ではないというのは間違いない。
まぁだからこそ、ワタシみたいな「文章書いて1000万円も稼げれば良くね?」というヤツがわざわざお金を出して買い求めるのだろうし、吉田氏自身も著書の中で「ニッチな部分のエキスパートになれ」と書いているのは、つまりはそういうコトだろう。

ネタバラシになってしまうので内容についてはこれくらいにしておくが、この本の中で印象的だったフレーズがタイトルにも掲げた「自閉症ライター」というコトバ。
電話に出ることなく、メールだけで意思疎通を計ろうとするヒトを指すらしく、仕事を出す編集者の立場から見て「仕事を出したくない」対象なんだそうだ。
確かに、これから仕事を頼もうとするにあたって「電話に出ない」というのは問題行動なんだろうけど、仕事を出すかどうか未定の段階、時には用件さえ定まっていないままに寄越される電話ほど迷惑なものはない。
そう考えると、同じ物事一つ取っても、立場によって捕らえ方は大きく異なるものだと思う。

むかしビジネスマナーのテキストに、メールと電話の使い分け、みたいなものが載っていたコトがあった。
それに、「面談のアポを取る時はメールより電話」と書かれていて、ものすごい違和感を覚えたコトがある。
実際月曜日の朝など、自分も上司もひっきりなしに掛かってくる電話の対応に追われ、通話中に受けた相手に掛け直すとこんどは相手が通話中で、結局アポ取りだけで午前中、みたいな時もあった。
そしてこんな時に、「先週末のうちにメールを入れておいてくれれば、どんなに助かるコトか」とつくづく思ったものだった。

「電話」は掛ける側のタイミングでコミュニケーションを取る。
「手紙・メール」は受け手のタイミングだ。
そんなワケで、掛けられた方の都合を考えると電話を掛けるコトすら出来なくなるワタシは大の「電話嫌い」であって、運転中のケイタイ禁止を良い事に掛かってきた電話になかなか出るコトがない。
そんなワタシは自閉症か?
なんて思いながら、それでも着信した瞬間に用件の分かる電話だったら、むしろ出なくても良いんじゃないかとやっぱり思う。

「金儲けの仕方」という本を買ったら、「自分と同じことをしろ」と書いてあったという笑い話があるが、この本もオチ的にはそういう結論になっている。
果たして1000万円稼げるかどうかはあと2、3回読み直してから考えるとして、こんな2、3時間で読破出来るハウツー本ばかり乱立して、果たして出版業界って大丈夫なんだろうかとちょっと心配になった。
こういうのが「売れる本」なんだなぁ。