キレてないですよ 〜ネットショップの限界と問題点について考える〜

dubrock2008-03-03


全盛期のプロレス中継、試合を終えフウフウと汗を拭く長州力選手に、アナウンサーが質問する。
「今日は、キレましたか?」
すると長州選手が、あまり活舌の良くないいつもの調子で、お決まりの返事をする。
キレてないですよ。オレ、キレさせたらたいしたもんですよ。キレてないですよ。」
翌日の話題はもちろん、「昨日のチョーシューあれでキレてないんだってー。アイツがキレたらどうなるんだろー。」という流れになるのだが、誰がどう見たって彼は「キレ」ていた。
「キレ」て大暴れしておいて、「キレてない」という。
それを観る側は、「キレてないんだ」と真に受ける。
それがプロレス観戦の「お約束」というものだった。
そしてソレを、「モノマネのネタ」にしてしまった芸人・長州小力のセンスというのも、たいしたもんだと思う。

今日は3月3日。
いわゆる「ひな祭り」、ルー語で言うトコロの「ガールズデー」というコトになるのだが、ほとんどの家庭では「日曜日」であった昨日が、「ひな祭り」ではなかっただろうか。
財布に余裕のない若い世帯は、「ひな祭り」を口実に実家を訪れる。
来られた方もまんざらではないので、ちょっとしたごちそうを用意してこれを迎える。
日本の平均的は「ひな祭り」とは、だいたいこんなカンジではないだろうか。

「ごちそうを用意する」と言っても、「ばあちゃんの味」なんてのは最近のコドモには喜ばれない。
「ばあちゃん」の方もそんなコトは百も承知であるので、ハナからそんなめんどくさいコトなどしない。
ま、ココで、夕方のスーパーなどに出掛けて行ってオードブルなど調達してくるコトになるのだが、最近では電話一本でピザにスシが宅配される便利な時代となった。
「ウチは孫たちが来たら、もっぱらコレ」という「ばあちゃん」も、世には多いのではないだろうか。
そしてインターネットの普及により、ホームページからもピザやスシを注文できる店舗も多くなった。
トッピングのややこしいピザなど、電話で長々言うよりは、コチラでキチっと伝えてしまった方が、合理的な場合も多いのではないだろうか。

とはいえ、世間の主流は「電話注文」。
インターネットでの注文は、「ネットで注文のヒト」で特定できるぐらい、まだまだレアなケースと言える。
そしてココに、夕方から一斉に入る「ひな祭り」オーダーにてんてこ舞いの、某宅配チェーンの店長がいた。
事前の「予約」だけでもヤバい雲行き。
そしてソコに当日オーダーが殺到し、当然ながら配達は、あっという間に2時間待ちという状況に陥った。
マニュアルに従い、配達遅延の連絡を一軒一軒入れていくのだが、ココでイレギュラーな「ネットで注文のヒト」が1人だけ居た。
よくないコトは重なるもので、このイレギュラーな「ネットで注文のヒト」が、不運にもお詫びの電話リストから外れてしまったのだ。
そうとも知らずに配達に訪れたバイトの高校生。
件の「ネットで注文のヒト」は玄関先で「仁王立ち」で待っていたという。

「お電話でもお伝えしていたかと思いますが、本日大変混雑しておりまして・・・」

マニュアル通りのバイト君に「ネットで注文のヒト」がキレた。
「電話なんか来てねえよ。だいたい、いつまで待たせんだ。」
ココで、(遅延の)電話をした、しないの押し問答が繰り返され、ハナシにならないと「ネット氏」はお店に電話を寄越した。
もちろん、こういう場合の「遅い」という苦情は慣れっこなので、店長が低姿勢で対応に当たるのだが、「ネット氏」は一通りの苦情を述べた後、「で、どうしてくれるんだ」を繰り返す。
この場合、「タダにしろ」「カネ返せ」「カネよこせ」といった類いのコトバを発すると、内容によっては客の方が立場的に悪くなる。
ソコのあたりは「ネット氏」も承知の上のようで、「で、オマエはどうしてくれるんだ」としか言わない。
あまりの執拗さに苛立った店長が、思わず切り返す。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
このコトバに「ネット氏」は敏感に反応。
「なんだオマエ、逆ギレか?なんだそのコトバ使いは?」
コトはさらに大きくなって行くのである。

たかがピザ一枚。
それが、約束の時間に届いたとか届かなかったとか、「遅れる」と連絡したとかしないとか。
大のオトナが大騒ぎするほどのコトとも思えないのだが、「たかがピザ一枚」遅れたおかげで、台無しになった「ひな祭り」はどうしてくれるのか、(職を)辞めて詫びろ、死んで詫びろと捲くし立て、ついには「電話応対が悪い」と矛先が変わる。
これは個人的な見解だが、接客対応が悪いとクレームを付ける主もまた、「接客業」で客のわがままに苦渋を舐めている一人ではないのかと思う。
「どんなに理不尽なことを言われても、決して『お客様』に口答えしてはならない」
そんな毎日を送っているからこそ、逆に客の立場での店員の些細な言動に、殊更に腹が立つ。
激昂する。
そういう負の循環によって、昨今のクレーマー天国が生み出されているのではないだろうか。

こんな時件の店長が、
キレてないですよ。オレ、キレさせたらたいしたもんですよ。キレてないですよ。」
長州小力風に返せるような、そんな余裕って欲しいもんである。
ちなみに実際の発言は、
「キレちゃいないよ。キレてからが俺の勝負だから。まあ、キレさせたかったのか、キレさせたくなかったのか…勇気ないよな。」
だそうである。