わかってねぇなぁ

dubrock2008-03-07


東京新橋に「優良運転手」のみが待つタクシー乗り場が出来たそうだ。
「優良運転手」とは、財団法人東京タクシーセンター
http://www.tokyo-tc.or.jp/index.cfm
が認定したタクシードライバーのコトで、「3年以上無事故無違反、10年以上苦情ナシ」のドライバーの中から選ばれた8774人の精鋭たちらしい。
「3年無事故無違反」はともかく、「10年苦情ナシ」というのがミソだ。
それくらい、タクシー乗車時のクレームというのは多いらしく、朝からこのニュースを扱う情報番組でも、「あんなコトをされた」「こんなコトをされた」と枚挙に暇がない。

その最たるものが「近距離の目的地を告げたら舌打ちされた」とか、「運転日報を見せられ文句を言われた」というもの。
たしかに、客の立場からすればこれは気分が悪い。
ところが、コレを乗務員の立場で見ると、また違った一面が見えてくる。
駅のタクシー乗り場で小一時間ほど順番を待ち、ようやく載せたお客にほんのワンメーター、すぐソコの目的地を告げられたとしたら、実際にするかどうかはともかく「舌打ちしたくなる」のは確かではないだろうか。

その気持ちが分からないヒトにもう少し詳しく説明しよう。
このハナシはあくまで都内、それも山手線の内側に入った「コア」の部分でのオハナシだ。
郊外の駅などで、日がな一日昼寝しているタクシーは別と考えてほしい。
基本的に客を拾う場合、「駅のタクシー乗り場」が一般的となる。
この場合、東京都内に営業区域を持っていればドコの駅でもよく、極端なハナシ葛飾や足立の外れに営業所を持っていても、渋谷駅で客待ちするコトだってできる。
なので、比較的客待ちの回転の速い「主要駅」に付け待ちすることが一般的となる。
この場合、どんなに回転の速い時間帯でも待ち時間30分、お客を乗せて目的地まで往復する時間を考えると、「平均して2時間で一組乗せる」が経験則となる。
このお客が、例えば新橋駅から田町、だとか東京駅から有楽町とかいわれた場合、運賃収入が710円。
まあ多少距離が出て1000円となったとしても、乗務員の収入は最大でコレの65%、650円がいいところとなる。
つまり2時間で650円。
そりゃ舌打ちもするだろうし、陰で「ゴミ」とも呼びたくなるものだ。

さらにコレで万券など出されたら、「近くのコンビニで崩してきてくれ」とも言いたくなるものである。
高額紙幣を出して支払いを断られたと苦情を言う、あえて書いてしまうと女性が多いようだが、コレだって出す側にタクシーで両替しとけという意識はないだろうか。
「ただ今つり銭が少ないので、細かい持ち合わせございませんか?」
などと低姿勢で聞くと、黙って千円札を出す「両替女」は結構多いと聞く。
個人であろうと法人であろうと、そんなに多額のつり銭を用意して乗務などしていない。
防犯上の理由もあるが、それは「見りゃ分かる」レベルだろう。
そんな状況で最初の客に万券出されたのでは敵わない。
最近ではコンビニだって、「夜間の万券はお断り」なのだ。
用意してから乗る
コレは常識中の常識だろう。

ちなみに乗る側の「ゴミ」とは「ワンメーター」という認識だろうが、乗せる側からすればそれは概ね「200円以下」というコトになる。
文句を言う客に限って「タクシー2000円以上なら他の交通機関を利用する」とか平気で言い放つのだが、世の中には平気で2万、3万と乗車するプライム層も結構多いのである。
「2000円以下はゴミ」発言に憤慨する前に、もう少し世の中を知るべきである。

ちなみに、そんな「プライム層」を獲得するべく「セルシオ」や「レクサス」の個人タクシーも都心部では珍しくない。
別に、「セルシオに乗せてくれ」とコチラが頼んだワケでもないのだが、新車のセルシオレクサスは「格が落ちる」という理由でタクシー用には販売してくれないのをご存知だろうか。
つまりセルシオレクサスのタクシーは中古車、もしくはどうしても新車が欲しい場合、一旦奥さんの名義で購入したものをタクシーに仕立てているのである。
そんな苦労をして仕立てた車に、客待ちの列を無視して「セルシオに乗ってみたいから」なんて理由で赤坂で乗り込み、「六本木」なんて言って乗車拒否されても、文句は言えないと思うのだがどうだろうか。

それから、近距離でこれ見よがしにタクシーチケットを差し出す、またクレジットカードで支払う、あえて書くならマスコミ関係者、いわゆる「勘違い勝ち組」も多いのだが、これが法人タクシーならいざ知らず個人タクシーにとってどれくらいKYか考えたコトがあるだろうか。
利用手数料とかみみっちいハナシをしているのではない。
わざわざ2000円のタクシーチケット、クレジットカード利用票を持って、しかるべき場所へ換金に出向かなければならないのである。

とはいえ不案内な土地や突然の雨、両手に余る荷物に突然の体調不良など、「近距離でもタクシーに『乗らなければならない』」ケースというのも多々ある。
では、「ゴミ」がタクシーに乗る場合どうすればいいのか。
そんな場合は小額の紙幣と500円玉を用意して大通りに出て、「空車」で流してくる法人の派手なカラーリングの車を止めればイイ。
法人のこのテは年式も古く、距離数もかなり走っている。
最近参入した新参には、「ヨソが捨てた車ばかり中古でかき集めて」なんてトコロも少なくない。
こんな車は、駅で客待ちをしていても「プライム層」の乗車は見込めない。
駅で待つくらいならこちらから拾いに行こうとばかりに、交通事故、交通違反のリスクを冒しながら一生懸命「流し」ているのである。
車庫に帰る途中とか、不案内な土地に来てしまったとか、よっぽどのコトがない限り近距離でも文句は言われないだろう。
コレで文句を言ったら、「ボロい車で贅沢言うな、ゴルァ!」と助手席の椅子でもド付けばイイ。
(運転席をド付くと、「傷害事件」になる場合があるので注意。)

ちなみに近距離の場合、料金を千円単位で切り上げた金額を支払い、「釣りはいらないヨ」というのが常識だったのだが、最近では皆無となってしまった。
この場合のチップが小額と思われるならば、さらに500円玉を追加する。
その為の「500円玉」なのである。
さらに言うなら、個人タクシーの場合受け取る運賃がそのまま乗務員の収益になるのだが、法人タクシーの場合運賃は一旦会社に納めなければならない。
だから、「釣りはいらないヨ」は法人タクシーの乗務員にとっては殊更に有り難いものなのである。
(間違っても「端数は要らないだろ?」なんて言ってはいけない。)

そうそう、ココまで「乗務員」と書いてきたが、安易に「運転手さん」また親しみを込めたつもりで「運ちゃん」と呼んではいないだろうか。
彼らは、見ず知らず、一見のお客に「運転手」と呼ばれるのを嫌う。
「トラック運転手ではなくタクシー乗務員」、つまり「物」ではなく「人」を乗せる仕事なのだという意識があるのである。
知らないうちに彼らの感情を害してはいないだろうか。

とはいえ、客の選り好みでのトラブルは絶えない。
法人、個人を問わず前述の東京タクシーセンターが全ての苦情に対応してくれる。
最近では、乗車拒否のタクシーを写メで撮って送りつける手法が増えたそうだ。
苦情が入ると、内容にもよるが1度はセンターに呼び出され、警告が重なると営業免許の剥奪もあり得る。

お互いに、節度と良識を持った関係で居たいものである。
「お互い」に、ね。