ほんとうのコトを言ってみろ

dubrock2008-04-22


そのオッサンは70過ぎ。
夜な夜な街に現れては、酔客を自宅まで送り届けるコトを生業としている。
いわゆる、「白タク」だ。
ちゃんとその筋への「みかじめ」も払っている。
むかしは、そういうのを払っていれば「若い衆」が客を付けてくれたものだが、最近ではそんなのもないらしい。
もっとも、「若い衆」も精度が下がって、当局の捜査官と肩を組んじまうバカが居るというからどうしようもない。
ともかく、本職のタクシーでも食えないご時世なので、オッサンの商売は上がったりだ。
ヒマを持て余して、本職にも堂々と世間話を持ち掛けるコトから、オッサンが出没するターミナル駅周辺では「有名人」だし、「たいして儲かってない」というのも周知の事実だった。

「道楽なのさ」

半分バカにされて、そう陰口を叩かれる。
そんなオッサンと、話題は年金のハナシになった。
話題の「後期高齢者医療制度」だ。

「年金が月に6万。これではとても生活できないというコトで、こんなコト(白タク)をやっている。介護保険、なんてのも引かれてはいるが、実際オレが動けなくなった時、何を介護してくれるというのか。」

そこで介護保険制度の概要と、サービスを受けるには自己負担があるというのを説明する。

「では、その自己負担が払えない場合、風呂にさえ入れてもらえないのか。そんなものに、毎月カネを取られていると言うのか。」

たしかにそれはその通り、月6万の年金から国民健康保険介護保険と天引きされて、手取り3万円では日銭にも事欠く。
しかし、「自己負担ナシ」の夢のような介護保険制度は、創設当初の心無い介護保険事業者によって食い潰された。
悪いのはコムスン折口だけではなく、派手な風体の介護保険事業者は、全国アチコチに居たのだから。
やはり年金で食えないならば、「生活保護」の支給を画策した方が手っ取り早いだろう。
実際、生活保護を受けている白タク仲間だって居ると聞く。

「アパートの家賃にもならない」

たしかにそれはその通り。
そういえば先日、「オレは最後は市営住宅で餓死してやる」とうそぶく独居老人も居た。
公的な扶助制度の受給者を蔑み、「オレはあんなものの世話にはならん」と強がる気持ちも分からなくはないが、「ただくれるカネを貰わないほうが損」と最近は思うようにもなった。
だから、やせ我慢しないで貰えばいいのに、とも思うのだが、このオッサン週末の競馬のハナシになると目の色が変わる。
人格が変わる。
一獲千金のハナシが大好物なのである。

なあオッサン、オッサンが毎晩夜の街に出なければならなくなったのは、本当は何か他に理由があるんじゃないのかい?
風潮に乗って世相批判なんかしてはいるけど、三連単で700万取ったら、また次のレースに全額突っ込んじゃったりするんじゃないのかい?

「アリとキリギリス」のキリギリスが、「死にそうだ」と声を上げる。
気が付けば、見渡す限りのキリギリス。
そんな情景を夢想していた。
キリギリスのまま幸せに死ねたら、それはそれで「勝ち逃げ」だと思う。
やっぱり最後は、流行りの「硫化水素」しかないのだろうか。