相棒 -劇場版-

dubrock2008-05-06


この映画のレビューで、「チェスのトリックに必然性がない」と書いていたヒトが居たが、ちゃんと最後まで観ていたのか疑問である。
「事件のきっかけとなった当時の外務大臣が『無類のチェス好き』であること」以上に、犯人が「チェスのトリック」で犯行を予告しなければならなかった理由が、ラスト30分でキッチリ語られているのだが。
そんなワケで、残念なことに招待状が届かなかったので、「相棒-劇場版-」を自腹で観てきた。
ちなみに「レイトショー」だった。

「2時間ドラマの内容で映画を作るな」という批評も最近では言い古された感があるが、今回のストーリーが2時間ドラマのレベルか否かはともかく、「(テレビ)ドラマの延長線上にある」ことは確かだ。
だからその前提がなければ、岸部一徳が水谷豊と回転寿司を食べるシーンで、何故館内に笑いが起こるか理解できないだろう。
そして、エルキュール・ポワロの推理の様に、観衆の知り得ないエピソードで事件が謎解きされるというコトがなく、「必ずシーンのどこかに、事件解決のヒントが出る」こと、そして観衆は「そのヒントを見逃さない」こと。
それらが「相棒」というこのシリーズの「楽しみ方」であると、前もって分かっているヒトには非常に面白い作品ではないかと思う。

事件の発生から始まるストーリーも単純明快で非常に好ましい。
途中原田龍二が、事件解決の方向性を決める大きなヒントを持ち込む下りが不自然ではあったが、「(ドラマでの)彼はそういうキャラ設定」としてしまえば何とかなる。
(かなり強引だが。)
そして、西田敏行に関する「ヒント」を見逃さなかったコト。
そしてその「ヒント」が、後半のクライマックスで鍵となるコト。
それらが、鑑賞する上でのかなりのカタルシス解消となる。
ただ、それだけの「ただのネタバレ映画」となってしまわない辺りが、「面白かった」と言える所以でもある。

さらに事件が終わったのに、なおも終わろうとしない映画。
本仮屋ユイカの下りが、ちょっと長すぎる気もする。
そう思いつつも、木村佳乃の回は毎回、最後の彼女の予想外の行動に驚かされる。
それが分かっているのに、やっぱり驚かされてしまう。
それがまた「楽しい」と思う。

ド派手なマラソン大会のシーンからすれば、ラストシーンが些か地味ではないかと思ってしまうのだが、それがこのシリーズの「味わい」というコトだろうか。
「国が主導するマスコミの世論煽動」というこの映画のメインテーマについて、他でもないアサピーが言ってしまってイイのだろうか。
最後に聞きたいのだが、それだけが気がかりではある。
(そしてこのテーマを扱ってなお、この映画を「娯楽映画」と言ってしまっていいのかどうか、一抹の疑問も残る。)

主演寺脇の舞台仲間、岸谷五朗が一番印象的だった。
ドラマを観ていたヒトは、是非。