「私は貝になりたい」試写会

dubrock2008-11-12


久し振りに招待状が届いたので、試写会に行ってきた。
今回招待された映画は、中居正広主演で11月22日公開の「私は貝になりたい」。

ゴールデンウイークの「相棒」以来、今年の夏の映画は不作だった。
特に洋画がハズした。
で、前回の試写会で観た「おくりびと」が予想外に良かったので、「邦画も悪くないじゃん」と見直し始めた頃。
主演の中居ちゃんはドラマ「白い影」でイイ演技してたし、ジャニなのにボーズ頭にもした。
共演は仲間由紀恵石坂浩二にワタシの好きな上川隆也までいる。

これは面白そう
というか、「泣けそう」かな?
ともかく、かなり期待して出掛けた次第なのであるが…

舞台は二次大戦の末期から敗戦後の日本。
徴兵され軍で捕虜の殺害行為に加わった主人公が、復員後に連行され、罪に問われるというもの。
と、ココまでは、1958年にドラマ化された脚本のリメイクであるし、パンフに書いてあるというコトはおそらく公式HPにも書いてあるだろうから、書いちゃってもいいだろう。

巣鴨プリズン」において、戦勝国アメリカが開いた軍事法廷
ソコに連行され、弁護士はおろか満足な通訳もなく裁判に掛けられた日本人のハナシである。
東条英機などビッグネームの陰に隠れて、ひっそりと処刑されたB級C級戦犯のハナシである。

重いテーマだ。
製作の主体がTBSであるので、それ風の味付けがある程度は想像できるが、それでもドラマから50年経った平成の世に、改めてリメイクしようというハナシである。
それなりの新事実、とまでは行かなくとも、更に踏み込んだ時代考証があってしかるべきだろう。

それが、ない。

そもそもが、獄中から奥方に宛てた遺書、その文中にあった、「もし、生まれ変わることが出来るなら、私は貝になりたい」という一文から着想の物語である。
だから、物語全体が奥さんからの伝聞型、回想から巣鴨プリズンでのダンナの行動を思い描く展開になる。
これは致し方ないコト。

「それにしたって」だ。
それにしたって、主人公豊松の獄中での生活ぶりが、あまりにお粗末なのである。
200名の嘆願書を取り付けようと奮闘する妻房江のくだりが、あんなに克明に描かれているのに、である。

だから、展開が予想出来る。
だから、一番盛り上がるべきラストシーンで、泣けない。
妻房江が苦労するくだりで感情移入してしまい、変なスイッチが入って大泣きするオッサンは居たが、あのラストではいくらジャニヲタでも厳しいのではないだろうか。

そもそも、講和条約締結前に、アメリカが行った軍事裁判。
そのことについて、真面目に扱うつもりが、本当にあったのだろうか。
もしあったのであれば、ああいう扱い方はするまい。
当時の実状に疎い今の観衆に対して、「問題提起さえすればいい」というハナシではない。

では無かったのか。
もし「無かった」のなら、50年も前のドラマを引っ張り出して、わざわざ映画化などするまい。
否、ネタが無いから昔の鉄板ネタをほじくり返して、それだけでは不安だからキャストを豪華にして、というコトか。
でもそれでは、巣鴨プリズンで実際に処刑された方々への、冒涜になりはしないだろうか。
それは許されるコトではない。

そんなワケで、何故「今」この映画を作らなければならなかったのか、その部分で理解に苦しむ作品だった。
2時間ドラマの筋で映画を作っちゃいけない。
わざわざ足を運んだ人に失礼だろ?
というコトで今回の評価は「もくすこしがんばりましょう」の40点である。

この「40点」は、迫り来るB-29の大編隊。
劇場全体が震えた、その轟音に。
この大空襲のシーンでの音響効果だけは、映画館で味わう価値がある。

ちなみに、会場からの帰り道で「タモさん」とすれ違った。
そっちのほうがよっぽど盛り上がった。
でも、咄嗟に「チョ〜タモリ〜www」とは出て来なかった。
それだけが心残りである。