誰かコイツを止めてくれ

田母神

ちょっと前に話題になった、政治的発言でクビになった航空幕僚長が、本を出したらしい。
まあゴーストライティング全盛の時代、ご本人が思うトコロを認めたと言うよりは、これまでの発言をダイジェストで纏めてみた、といったトコロだろうか。
編集者の企画としては、「悪くない」だろう。

国会に参考人として呼ばれて、
「(自衛官に)言論の自由は無いのか!
と大いに憤っていた氏ではあるが、氏の主張とは即ち「自衛官の地位向上」であって、「国土を命懸けで守る自衛官にもっと尊厳を」言うのであれば、つまり「自衛官」とは「軍人」であって、「軍人」に「政府と異なる政治判断の表明とか、歴史認識とかは無い」のである。
つまり、制服組のトップであった彼に、「言論の自由」なんてありゃしないのである。

そういう意味では、自らの発言で航空自衛隊トップのポジションを目出度くクビになり、晴れて「自由の身」になった今となれば、要は「ナニ言ってもイイ」のであって、本を出そうと講演で全国を回ろうと知ったこっちゃない。
好きにしてもらえばイイ、のであるが、…

この本の広告、その見出しによれば、

『Q国境侵犯にはどのように対処すべきですか?
A領空侵犯機はただちに撃ち落とし、不審船は粉にして日本海に沈めてしまうべきです。
拉致問題はどう解決すべきですか?
A私は自衛隊が取り返しに行くべきだと思います。』

ときて、

統合幕僚学校での講義を再現!
自衛隊の上級幹部は「この授業」を受けていた!』

ってさ、これまで「省」にも昇格できずに「防衛庁」として、「所詮は日本軍の残党が仕込んだ軍隊なんだろ?」なんていう世間の冷たい目に絶えながら災害派遣なんかをコツコツこなして、ようやく得られた今の地位と「国民の信頼」なんてのを、まあ一瞬で吹き飛ばしてしまうものなんですよ。

もう一度、彼が何の為に自己主張していたかを考えてみたい。
コイツ確か、「自衛隊と、自衛官の地位向上」とか言っていた。
でも、話せば話すほど「日本軍の亡霊」みたいになって、「ああ、やっぱり、自衛隊ってのはそういう組織なんだ、自衛官ってのはそういう考え方を持っている連中なんだ」って空気になっていく。
つまり「逆効果」だ。
それに気付かないワケはあるまい。

では何なのか。
「売名」なのか、「金儲け」なのか。
その可能性は日増しに濃厚となっていく。
今では、問題になった懸賞論文の賞金なんて、返そうと返すまいとカンケーないぐらいに、「地方講演でウハウハ」なのではないだろうか。
そして本だって、こうしてココに書くことも、少なからずとも「宣伝」になってしまう。
「その本、一体ナニが書かれているのだろう?」
と興味を持ってしまったヒトが、少なからず居ると思うのだ。

自衛官の地位向上を謳いながら、その自衛官を踏み台にして私腹を肥やす元自衛隊トップ
なんて、踏まれた自衛官からすれば、許されるものであるワケがない。

では、これを持て囃すマスコミの意図はどのへんにあるのだろうか。

「話題性から視聴率が稼げる」?
それもあるのだろうが、ホントのトコロは「ホラ、ネオナチですよ、ファシズムですよ」と自衛隊を貶める釣り。
企画と出演を許した上層部には、そういう意図があってもおかしくないのだ。

そんなワケで、このヒトの『ナニ』が、『どう』イケナイのかから、今一度「日本の国防」について考えてみたくなった新聞広告だった。

コイツを黙らせるには、ただひたすら黙殺するのみ。
であれば、こうやってリアクションしてしまうコト自体NGなんだろうが、黙って居られない「酷い見出し」なのである。