社会的入院

dubrock2009-11-07

社会的入院とは、「面倒を見る家族が居なかったり、利用できる介護施設やサービスがなかったりして、医療以外の理由で必要のない入院を続けること」と定義されるらしい。
1973年の老人医療費無料化により「急増した」とされる。

「末期がん」の宣告を受けたオヤジが入院して、丸4週間になった。
退院に向けた流動食直後の大量下血も一段落して、とりあえず「生命の危機」は脱した感があるが、血圧が70と低く「立ち上がるとフラフラする」状況が続いている。

本人の腹積もりとしては、一般病床の平均的な在院日数である17日を目安に10月中の退院を考えていただけに、11月を6日も過ぎてなお「お声」の掛からない状況に苛立ち、「社会的入院」を危惧する発言をするようになった。

血圧も上が70しかなくて、しかも胃と肝臓に末期の「がん」があるのだから、「必要のない入院」ではないハズなのだが、「手の施しようも無い」のも事実。
このまま下血を繰り越す度に次第に弱って行き、「寝たきり」になってしまってからでは「もう何も出来ない」のであるから、意識もハッキリして自力でトイレに行けるうちに、一度は帰宅したいと言うのは当然のことであるし、「位牌持ち」としてもその部分は大いに尊重したいトコロでもある。

主治医の同意を得て粛粛と手続きは進み、在宅医療を提供する医療機関との橋渡しをする「ソーシャルワーカー」なる方の訪問を受けたのであるが、・・・

ほら、介護保険の適用を受ける際の「ケアマネージャー」の訪問で、いつもは起き上がれない病人が跳ね起きて応対して、結局満足な等級が貰えなかった、なんてハナシがあるじゃないですか。
アレと同じことをやっちまったらしいんだなぁ。

曰く、「退院して落ち着いたら『お粥』から始めて体力つけて、・・・」と。orz

「末期胃がんの患者が食べるハナシをしている!」
(そんなハナシは聞いていない!)
ソーシャルワーカー殿は取り乱し、困った主治医は今一度「家族で」話し合うよう要望。
そんなワケで、急遽呼び出された「ご長男」なのであります。

元来「ぼけ」の気のあったオヤジではあるが、「都合の悪いことは聞こえない」というのには「故意」とも取れる意図的な部分が見え隠れしていたのも事実。

「オヤジ、なんかヘンなコト言ったか??」

なんて問い質しても、
「あれはそういう意味で言ったんじゃない」
とあっさりはぐらかされてしまうのである。
告知済みの「胃がん」が末期であり、切ることはおろか「食べる」ことすら無理というのも理解している。
のみならず、「退院して落ち着いたら」の例え話をするにはしたが、「落ち着く」ほどの時間も恐らく残されてはいないだろうというコトも、何となく察知していたのである。

「なら、余計なことなどいわなきゃいいのに」

というのもあるが、それを承知でここまで前向きなことを言える、その精神状態こそ注目して頂きたい。

全てを承知の上での、
「『末期がん』なんて聞こえない!」
だったのである。
(「それが何で皆分からないのか」と本人は大いに嘆いていたが、それは腹芸が過ぎるというものだろう。)

そういうコトなら是が非でも、一度は退院させてやるしかあるまい。

手続きは進める。
問題は来週の退院まで、容体を安定させていること。

「週末下血とかすんなよ」

そう約束して病院を後にしたのであるが、昨日はついに「腹水」まで溜まり出したの報が。
肝臓と腎臓がほとんど機能していない、とは医師からは再三言われては居たが、あまりの展開の速さに動揺が隠し切れない自分が居る。

「腹水」が辛いのは、叔父の最期を看取った時に確認済み。
「それを承知で点養を続けるのがつらい。」
そう訴える母に、掛ける言葉が見つからないのである。