惜しい。実に惜しい。

dubrock2009-11-12

不謹慎なハナシをしようと思う。
2年7ヶ月の逃亡の末、昨日逮捕された市橋容疑者についてである。

逃亡中の彼が既に複数回の整形手術を施し、「一見別人」の風貌になっていたことには度肝を抜かれた。
「驚いた」というよりは、「そういうやり方もあるのか」というのが正直な感想である。

「整形」はプライバシーもプライバシー、とってもデリケートな個人に関する情報である。
自由診療であって健康保険なんかハナから使えないのに、「本人確認」を厳格にしてしまっては「せっかくの客を逃がす」。
そういうクリニック側の心理を逆手に取っての、「偽名での受診」。
それも、「予約不要」という、つまりは「ヒマ」なクリニックを狙っての受診は、非常に理に適っていると言えよう。
(つか、本名で整形手術を受けてるヒトってどのくらい居るのだろうか。)

逮捕の直前には大阪で1年2ヶ月、その前はどうやら神戸で半年ほど、「建設作業員」として働いていたらしい。
この時には既に「整形」が施され、当時の同僚は彼を「市橋」ではなく偽名の「井上」と認識していたのだから、更なる整形手術を考えずにそこで大人しくしていれば、・・・
と思うのだが、それが「逃亡者の心理」というものだろうか。
ただ、「定期的に居所を変える」は逃亡のセオリーでもある。
(もちろん「動く」時が最も危険でもあるので、細心の注意が必要である。)

名古屋での、最後の整形直前の顔写真が晒されてしまった、というのが、彼最大の誤算だっただろう。
そして、ネタ不足に喘ぐマスコミの餌食になり、過熱報道の標的になってしまった、というのも不運。

こういう場合は、まず2週間。
希望半年ぐらいは山中にでも籠り、世間の関心が他に移るのを待つべきだったと思う。
どうせ飽きっぽいマスコミのコトである。
来春の暖くなる頃まで世間の関心を引き付けておくことなんか、どうせ出来っこないのだから。
安易に公共の交通機関で「沖縄」など目指し、あろうことか待合室に長時間滞在したのが命取りになった。

逃亡中の身ではもしかしたら、テレビがあそこまで過熱しているとは知らなかった可能性もある。
すると、インターネットでの情報収集では不十分。
今なら「ワンセグケータイ」の活用が求められることとなる。

指名手配犯がケータイを持つにはどうすればいいだろうか。

これには、ちょっと前に摘発されたヤクザの手口が使えそうである。
手口は、「障害者本人に成り済まして住民票を取得し、免許センターで原付免許を取得する」というもの。
怪しげな外国人から粗雑な偽造免許を買う必要もなく、「真っ当な」免許証が手に入ってしまうのである。
(建設会社に何ヵ月か居れば、「障害者」ではなくても「手頃なヤツ」の目星くらいは付けられるハズである。)

あとは住所変更して銀行口座作って、・・・

だが、ムリならインターネットこそ出来ないが、「ワンセグゴリラ」とかでも問題無いだろう。
とにかく、「今」世間で騒がれているのは何か、を知っておく必要があるのである。

「素性を偽って就ける職」というのは、建築関係に限らず「結構多い」。
そりゃ、「一部上場企業のホワイトカラー」はムリかもしれないが、肉体労働を厭わなければ、そして市橋容疑者のように「若ければ」、引く手は数多だ。
しかも市橋は「当座の生活資金」を持っていたのである。
これは、「日払い」に固執しなければ生きていけない「ネカフェ難民」より数段有利な状況でもある。

官憲に踏み込まれて裸足でベランダから逃げた時は、おそらく「ほとんど無一文」だったと思われ、それは「逃亡」という観点から見れば「一番シビアな状況」と言えよう。
当時「歌舞伎町でゲイに尻穴貸して日銭を得ていた」なんて三流週刊誌の記事になっていたが、それも「なるほど」なシノギである。

仮に「客」が「市橋」に気付いたとして、それを言うということはつまりは「カミングアウト」するということである。
女房子供も居る「フツーのサラリーマン」が、「実はそういう趣味がありました」なんて、容易に言えるワケが無いのである。
「女はハダカになればカネになるが、男はハダカになっても一文の値打もない」と言われるが、ところがどっこい女以上の高値になるトコロが、日本にはあるのである。

身柄を確保され、素直に移送に応じる市橋容疑者の姿からは、
「疲れちゃった」
という声が聞こえて来そうである。
彼は「逃亡」というものをどう考えていたのだろうか。

「時効」というものがあるにせよ、あれだけの証拠を残して「時効だから無罪放免」とは、社会的には言い難い。
つまり、「裸足」で駆け出した「あの日」に、「市橋達也」はこの世から居なくなったのである。

その後、まんまと整形を施し「井上」という名を得たならば、以後は「井上」として、住民票も年金もない生涯を全うしなければならないのである。
それだけの覚悟が彼「市橋」にあったのかどうか。
是非聞いてみたい、今日この頃なのである。
手配容疑の時効成立まであと半年、不謹慎なハナシであった。