柳家小三治

dubrock2010-01-23

噺家柳家小三治が、落語協会の会長に就任するそうだ。

正当派古典落語の名人
というコトらしいが、・・・

正直あまり、好きではなかった。
観ていて「怖い」のである。

「古典」と言われる噺を「ただ」話すのではなく、「巧く」聞かせる「噺家」というのは少ない。
そこへいくとこの「十代目小三治」は流石「名人」と言われるだけあって、「上手」である。

上手なんだけれども、・・・

笑えない。
高座での、あの鋭い眼光。
何か、「伝統芸能」でも見せられているかのような、並々ならない緊張感。

おおよそ、
「ちょっと一笑いしようか」
という雰囲気とは無縁の空気。

あんなんで、よく「名人」とか呼ばれてるな。

そう思っていたのである。


ここまで、「小三治」についての印象を過去形で書いたのには理由がある。

お正月の深夜に、NHKでやっていたドキュメント番組。
最初は、「あ、小三治だ」くらいの印象だったその番組が、面白い。
もう寝なくちゃいけない時間だし、だいいち眠い。

もう眠りたいのに、

番組に最後まで引き込まれてしまったのは、その「小三治」の人間性なのである。

小三治の師匠が、「あの」表情豊かな「五代目小さん」と言われても、にわかには信じ難い。
その、「五代目小さん」に弟子入りした経緯について小三治は、
「ああいう風に、人を笑わせてみたかった」
と言っている。

自分の、この真面目過ぎる性格を知った上での、「真逆」の存在への弟子入り

落語界には、その破天荒ぶりが語り草になっている噺家が多い。
そんな中で、「ただひたすら真面目」な小三治

当時師匠の「小さん」から言われた、
「おまえはつまらない。」
の一言が、今でも忘れられないという。

リウマチを患っている。
食事の度に物凄い量の服薬である。
症状の緩和の為に、免疫を抑える薬を服用しているので、「ちょっとの風邪」が命取りになるのだという。

徹底した体調管理。

それでも、地方の公民館レベルから年間200もの高座をこなすという。

その、落語にかける情熱。

「人を笑わせたい」という欲望。


演目は、事前に決めてはいない。

その日の天候、気候、季節、客層、地域性。
それらで話す演目に見当を付けながら、高座に上がる。
高座に上がって、「枕」の部分で客の反応を見ながら、最終的に演目を決める。

「今日は、『子別れ』を覚えてきたので、それをやります。」

みたいな、そこらの学芸会レベルとは一線を画す、見えない配慮。

それでいて、「自分は250ほどの噺を覚えたが、実際高座で演るのは50ほど、たった50ほどの演目を使い回しているに過ぎない。」という現状が、気に入らないのだという。

どこまでも真面目な、「十代目小三治」。

面白くなれない小三治

その真面目さが協会運営にどう出るか、2年の任期を見守っていきたいと思う。